ボラティリティが急上昇する場合、証券取引所や金融先物取引所は、原市場の取引を一時的に停止することがあります。これらの制限は、通称「サーキットブレーカー」とも呼ばれ、「制限値幅の上限」および「制限値幅の下限」を設定することで市場が急変動リスクを抑制します。
※サーキットブレーカーや相場のボラティリティ急上昇に伴い、対象銘柄に電話マークが表示された場合、IG証券では新規決済の注文、お出しいただいている予約注文の訂正、取り消しはオンラインではお受けできません。
制限値幅の上限とは何ですか?
制限値幅の上限とは、1回の取引セッションで株価指数や商品先物の価格を引き上げることができる最大金額のことです。この上限に達すると当該取引所は買いの取引を停止します。
制限値幅の下限とは何ですか?
制限値幅の下限とは、1回の取引セッションで株価指数や商品先物の価格を引き下げることができる最大金額です。この下限に達すると当該取引所は売りの取引を停止します。
リスクイベントにより多くの投資家がパニック状態になると、売りが売りを呼び市場全体が暴落します。制限値幅の下限は、このような状況に市場が陥ることを防ぐために導入されました。
制限値幅の水準
制限値幅の上限と下限の水準は各取引所や資産ごとに設定されています。これらの水準は変更される可能性があります。
設定水準の詳細については、各取引所のウェブサイトでご確認ください。
制限値幅の上限例
制限値幅の上限の例として、商品先物取引を見てみましょう。
トウモロコシ先物の場合、制限値幅の上限は前取引日の終値から0.40ドルで設定されています。価格がこの上限を超えた場合、残りの取引日までの間、取引が停止されます。
この措置は、トウモロコシ先物やその他商品先物の価格が原資産より大きく乖離する(価格が上昇し過ぎる)のを防ぐことを目的としています。
制限値幅の下限例
制限値幅の下限の例として、株価指数取引を見てみましょう。
世界には様々な株価指数があります。このため制限値幅の設定は、市場や取引所により下限と取引停止時間が異なります。
ここでは米国の代表的な株価指数のひとつS&P 500を取り上げます。この指数は、時間外(GMT:午後10時から午後1時30分まで)は-5%に設定されています。価格が設定された水準を超えると、取引は一定の時間(通常は15分間)中断されます。
なぜ制限値幅が導入されたのか?
2010年5月6日にボラティリティが急上昇しました。この急上昇によるダメージは特に米国市場で深刻で、ダウ工業平均(DJI)は10分以内に約1,000ポイントを失いました。当初、下落の原因がわからなかったのですが、詳しい調査の結果、アメリカの投資信託会社による41億ドルの売り注文が原因であることが判明しました。
また、2010年5月から7月にかけて、ギリシャの財政問題をはじめとした欧州債務危機、英国での総選挙さらにはディープ・ウォーター・ホライズン油流出事故(メキシコ湾原油流出事故)といったリスクイベントが立て続けに起こりました。当然、多くの投資家はリスクを回避しようと保有資産を我さきに売却しようとし、市場のボラティリティが急上昇しました。
この時の取引状況ですが、約160億件の先物取引が2分間で執行され、多くの銘柄が急落しました。これらボラティリティの急上昇と市場の急落を教訓とし、制限値幅の上限/下限を導入することが検討され始めました。
そして2011年4月、米国内にある複数の国内取引所および金融業界規制当局(FINRA)により、初めて制限値幅の措置が提案されました。最終的には2012年5月31日に証券取引委員会(SEC)によって承認、その後導入されました。
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