注文の仕組みと種類
約定とスリッページ
株式など取引所で取引される資産については、ブローカーが、現在注文を出している買い手と売り手の一覧が示される取引所のオーダーブックを確認します。
オーダーブックにはそれぞれの注文の価格とサイズが示されますので、どの位置に注文がくるのか容易に判断することができます。
ロンドン証券取引所やニューヨーク証券取引所などの従来の主要証券取引所以外にも、一定の銘柄に関し注文や呼値を受け付ける数多くの多角的取引システム(MTF)が存在します。売買できるブローカーは限定されますが、従来の取引所より良い価格が提示されることもあります。
主要取引所やMTFが表示する価格は一般に見ることができます。仮にトレーダーが「見えない流動性」(dark liquidity pools)ともいうべき大口注文に隠れた価格にアクセスできるのであれば、当該価格での売買も可能になります。見えない流動性に係る参加者は通常、注文の価格やサイズ、顧客を明らかにしたくない機関投資家です。
FXなどOTC銘柄の価格は、市場に参加するグローバルバンクや流動性を提供するプレイヤーのネットワークを基に形成されます。
スリッページ
注文が執行される価格に影響をもたらす別の問題にスリッページがあります。
価格は瞬時に変化します。注文が出されブローカーが受け取るまでの僅かな時間でも価格は変動し、意図した価格で売買が成立しない可能性があります。
成行注文は、ブローカーの最適な価格で執行されます。例えば衝撃的な出来事が起きたり、企業業績が予想をはるかに下回ったりするなどして、銘柄のボラティリティが高く値動きが激しい場合、期待した値段より圧倒的に不利な価格での執行となる可能性があります。
市況が不利な方向に進んだ場合に備えて、ポジションを清算するためストップロス注文を出している時に、スリッページが大きく影響します。値動きが激しすぎて、ストップ注文の価格での清算が不可能となることがあるのです。
例
ダウ平均株価指数を17,838で買い、17,699のストップ注文を出すとします。
ウォール街の大手企業数社は、その業績が予想を大きく下回り、ダウ平均株価指数を構成する他の銘柄の株価も押し下げ、最終的に株価指数はストップ注文価格を下回りました。ストップ注文の価格に達した段階でストップ注文が即座に発動されます。
この表は、銘柄がストップ価格に達する前後でブローカーが出した価格がどのように推移しているかを示しています。
ビッド価格は21時10分33秒に17,699(青字)を付け、ストップ注文が発動されます。ストップ注文が執行される価格です。しかし注文が実際に執行されたのは、次の21時10分36秒の17,695(緑字)です。スリッページにより4ポイントの支払いとなりますが、さらなる下落は抑えられました。
ノースリッページ注文
スリッページのリスクが不安に感じられるのであれば、ノースリッページ注文でその懸念は解消されます。
ノースリッページ注文の仕組みは、常に設定された水準で正確に約定されるという点を除いて、標準的なストップ注文と同じです。トレーダーもしくはトレーディングプロバイダーがスリッページのリスクを取ることになります。そのため、スリッページを発生させず、注文価格で約定させる保証料が発生します。
ノースリッページ注文を付けることで、潜在的な損失は確実に限定され、ボラティリティの高い、又は大量の銘柄を売買する場合には、安心材料になります。
まとめ
- 取引所で取引される資産に関しては、その価格はオーダーブックにより決まります。
- OTC銘柄に関しては、売買に参加するプロバイダーにより決まります。
- 値動きの激しい相場においては、注文価格と約定価格が異なる場合があり、その差をスリッページと言います。
- ノースリッページ注文で損失を確実に抑えることができますが、そのためには料金が発生します。