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ファンダメンタル分析

レッスン 2 / 8

ファンダメンタル分析の仕組み

ファンダメンタル分析は、一定の共通した方法が確立されているのではなく、様々な方法で実施されます。とはいえ、多くのアナリストがトップダウンアプローチを使用する傾向にあります。トップダウンアプローチでは、まず全体像の考察から開始して、段階的に各銘柄を取り巻く詳細を分析していきます。

それでは、どのようにファンダメンタル分析を行うのか見ていきましょう。英国株の取引を想定します。潜在的な利益獲得機会を求めて銘柄を分析するために、順を追って検討すべきステップを挙げていきます。

全般的な景気動向を検討する

英国経済の全般的な状況はどうか?
 
景気が拡大傾向にある場合、国内の業界及び会社は同様に利益を稼得し、成長することが合理的に見込まれます。逆に、景気が後退傾向にある場合、成功している会社であっても逆風にさらされることが見込まれます。
 
こうした判断を行うために、GDP、鉱工業生産指数、消費者物価指数(CPI)、小売売上高、住宅価格指数、雇用統計といったマクロ経済指標を分析します。そして、額面通りに受け取らない方がよい場合もありますが、もちろんニュース報道や政治的発言なども考慮に入れます。

どの業界が影響を受けるのかを評価

マクロ経済要因はどのように異なる種類の事業に波及していくのか?
 
一国の景気全体が拡大傾向にあるときに、特定の業界が他の業界よりも便益を受ける場合があります。例えば、消費者の購買力が高まる場合、サービス業界がそうした購買力の上昇による便益を享受する傾向にあります。一方で、公益事業は概ね景気動向に左右されないことが多いと言えるでしょう。
 
また、景気の拡大が大半の業界及び会社に対して全般的に便益をもたらす場合もあります。こうした状況では、株式の全般的リスクは比較的低く、成長を狙った戦略を考慮するメリットがあるかもしれません。例えば、テクノロジーバイオテクノロジーなどの業界は、好条件に恵まれると急成長する可能性が高い傾向にあるため、そうした業界に着目することが考えられます。
 
一方で、景気後退が見込まれる場合、保守的なアプローチに基づき、利益確保を目指す安定した会社への投資を決めることもあるでしょう。例えば、エネルギー公益事業の株式を購入することが考えられます。
 
あるいは、空売りによって予想される株価の下落から利益を得ることも考えられます。空売りの概念については、「取引の仕組み」というコースで取り上げています。簡潔に言うと、元々空売りは、株式をまず売ってから、後日値下がりした価格で買い戻す目的で、株式の貸与を受けることが必要とされます。

着目する業界を選択する


どの業界が最も有望か?
 
興味のある業界をいくつか特定したら、次は、各業界の製品又はサービスの需要と供給の水準、そしてそれらの将来見通しに影響を及ぼすその他の要因を検討します。業界の市場規模、業界全体の成長率及び経済全体に対する業界の影響度を考慮します。

例えば、公益事業の中の電力業を考えてみます。英国での電力市場の規模は、人口の規模と関連していますので、多くの人が電力を消費するほどその市場規模は大きくなります。電力業界は日常活動の電力のために一定の電力需要が見込まれますが、一方で、新しいテクノロジーの出現により需要が増減する可能性もあります。したがって、どのような技術革新が大衆消費市場に今後登場するのか検討することは意味があります。

対照的に、鉱業は採掘した地下資源のコストに連動した非常に変動的な成長率を示す傾向にあります。新しい発見は重要な成長押し上げ要因になりますが、鉱業は世界的な需要の変動によっても影響を受ける可能性があります。例えば中国経済の減速といった事象は、建設用原材料の消費量の低下に繋がり、鉱業会社に影響を及ぼします。
 
株式市場では、このように特定の株式グループが同じ方向に一緒に動くことがよくあります。よってこうした理由から、単に取引に適する会社の株式を選択するよりも、業界という枠組みで選択する方が重要である場合があるのです。

絞り込み

どの企業がより深い分析をするに値するか?
 
特定の業界に着目することを決めたら、次はその業界を構成する企業を吟味して、どの会社をより詳細に分析するかを決定します。
この段階では、業界内の競争状況及び今後予想されるビジネストレンドを慎重に考えることが重要です。以下に、こうした場合に役立ちそうな質問をいくつか挙げてみます。
  • どの会社が最大の市場シェアを獲得しているか?
  • どの会社が業界リーダーと認知されているか?
  • 業界に混乱を生じさせている新規参入会社はあるか?
  • 業界再編成をもたらす可能性がある変更や進展が近いうちにあるか?
  • 現在の競争優位性が失われる可能性が近いうちにあるか?
ビジネス環境を十分に分析すれば、どの会社がライバル会社より優位な立場にあるかを把握することができるはずです。そうした会社が投資に値する会社である可能性は高いのです。次のレッスンでは、そうした会社の業績見通しをさらに詳細に分析していく方法を説明していきます。

ビジネス環境を十分に分析すれば、どの会社がライバル会社より優位な立場にあるかを把握することができるはずです。そうした会社が投資に値する会社である可能性は高いのです。次のレッスンでは、そうした会社の業績見通しをさらに詳細に分析していく方法を説明していきます。 このようにファンダメンタル分析を実施する際、常に、各ステージで「同等のもの同士を比べる」ということに留意しなければなりません。言い換えれば、一国の経済を分析している時は、当該国と他の国の経済とを比較します。業界を評価しているときは、当該業界と他の業界とを比較します。さらに、個々の会社を分析する段階では、当該会社と同じ業界に属する他の会社とを比較します。例えば、バークレイズ銀行を分析している場合、テスコのような小売業と比較するのではなく、HSBCのような銀行と比較を行います。

まとめ

  • ファンダメンタル分析では一般的にトップダウンアプローチを取ります。
  • トップダウンアプローチでは、まず経済的な全体像を検討します。
  • ·次に、異なる業界の業績を評価し、着目すべき業界を1つ選択します。
  • 最後に、当該業界に属する会社を分析して、有望な会社を特定します
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