詳細なファンダメンタル分析を実施するには、時間と労力を投資する必要がありますが、ファンダメンタル分析にはそれだけの価値があるでしょうか？この判断をする上で参考になるように、ここからはファンダメンタル分析の長所と短所を検討していきましょう。

ファンダメンタル分析の長所

ファンダメンタル分析は、次のようなことを実施する上で役に立ちます。

長期トレンドを特定する

テクニカル分析が一般的には短期パターン及び機会だけを特定するのに対し、ファンダメンタル分析は長期投資にふさわしい会社を明らかにします。長い目で取引を捉えていて、繰り返し取引手数料が発生することを好まない場合は、ファンダメンタル分析はより適しているといえるでしょう。

バリュー株を見つける

堅実なファンダメンタル分析を行えば、株価が本来の価値よりも割安（又は割高）になっている会社を特定できる可能性があります。そうした会社に投資することはバリュー投資として知られており、ウォーレン・バフェットなど世界有数の多くの投資家によって支持されてきた方法です。

バリュー投資家 ウォーレン・バフェット氏

ビジネス感覚を身につける

数々の会社を包括的に分析していくと、そうした会社がどのように運営されているかに精通し、その業界及び収益や利益をもたらす源泉が何であるかを理解できるようになります。こうした感覚は非常に貴重で、取引を避けるべきなのはどの会社か、ポジションを取る又は決済するのに最適な時はいつかなどを認識するのに役に立ちます。

貸借対照表及び損益計算書の分析に精通してくれば、異なる会社やセクターごとに様々な水準のボラティリティ及びリスクがあてはまるという感覚も身についてきます。例えば、ハイテク株は公益株などと比較すると一般的にボラティリティが高く、高いリスクにさらされていると考えられています。

株式を正確に分類する

事業は絶え間なく変動にさらされており、会社は環境が変化するにつれて成功することもあれば、失敗することもあります。ファンダメンタル分析を通じて収集した会社の事業に関する理解は、当該会社を次のいずれかに正確に分類するときに役立ちます。

• 経営が健全かつリソースが豊富で、変化していく環境下で繁栄する体制が整っている組織
• 不備があり、柔軟性がなく、変化していく環境に必死で適合しようとしている組織

この分類は、同様に業界内での変化に直面したときの相対的評価を実施するときに役立ちます。

ファンダメンタル分析の短所

ファンダメンタル分析には一定の短所もあります。

利益確定までに長時間かかる可能性がある

ファンダメンタル分析は割高又は割安になっている会社を特定する際に役立つかもしれませんが、株価が分析通りに動くまでにかかる可能性のある時間を必ずしも明らかにしません。したがって、チャート上で売り買いのタイミングが予測しやすいテクニカル分析とは異なり、利益確定までにどのくらい時間がかかるのかを知る術はありません。

全く同じ業界は二つとない

会社の価値を評価する方法は、当該会社が属する業界に応じて決まります。つまり、馴染みのない業界に属する新しい会社を検討するたびに、全く異なるアプローチを用いる必要がおそらくあります。よって、時間的制約から、検討できる業界が一つ又は二つに絞られるかもしれません。

客観性の確保が難しい

会社の公正価値を算定する際、変動要因（例えば、金利見通しや政府の課税政策）について仮定を設定しなければならないことが少なくありません。しかし、こうした仮定は完全に主観的な性質のものです。自分の考え方が過度に楽観的又は悲観的であるかもしれないことを考慮に入れて、複数のシナリオと結果を検討することが最善の策でしょう。

会社は自社の好材料だけを伝えようとする

ファンダメンタル分析で会社を評価するために使用する情報の大半は、会社自身から発信されたものです。会社はIR（投資家向け広報）の専門家を雇って、すべてのリリース文書において自社の業績が可能な限りプラスに反映されるように万策を講じています。そのことに留意し、会社からの発表を真に受けないようにすることは重要です。