原油価格見通し:WTIの21年平均は50ドル台か ワクチン普及進まず上値重い
(4月8日更新)WTI原油先物の期近が1バレル=60ドルの節目を挟み一進一退で推移している。コロナワクチン普及への期待で昨秋以降、ほぼ一本調子で上昇し、3月上旬には67ドル台後半を付ける場面があったが、その後は上値が重い。今後について実現性が高いシナリオは年末にかけての50ドル台でのレンジ相場だ。
(4月8日更新)ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の期近が1バレル=60ドルの節目を挟み一進一退で推移している。コロナワクチン普及への期待で昨秋以降、ほぼ一本調子で上昇し、3月上旬には67ドル台後半を付ける場面があったが、その後は上値が重い。
WTI原油先物の期近の5月限は7日、59.77ドルで取引を終えた。
今後について実現性が高いシナリオは年末にかけての50ドル台でのレンジ相場だ。米国の景気回復に弾みがつけば、相場は3月の高値付近まで一時的に上昇する可能性はある。しかし、これまでのところ、ワクチンの普及は英米など一部に限られる。懸念されている変異ウイルスの感染拡大が上値を抑制するかもしれない。産油国はそうしたなかで減産規模を縮小する。
原油価格に影響を及ぼすとみられる諸要因を以下に挙げた。
ワクチン接種の進展
米疾病対策センター(CDC)によると、7日時点の米国の累計のワクチン接種回数は約1億1000万回だった。少なくとも1回ワクチン接種を受けた人は米人口の33%で、65歳以上に限ると76%となる。必要な回数の接種を完了した人は約6400万人で、全人口の約19%に相当する。
米国のワクチン接種の進展は順調で、バイデン大統領は6日、同国の成人全員が19日からワクチン接種を受けられるようになると明らかにした。
CDCが2日発表したワクチン接種者向けの国内移動ガイドラインによると、マスク着用などの予防措置を講じれば、移動前後のPCR検査や移動先と帰宅後の自主隔離は不要となる。
米国ではメモリアルデー(今年は5月31日)から夏季のドライブシーズンが始まる。今夏には米国民の多くが旅行に出るとみられ、ガソリンの消費が増大するだろう。
一方、欧州ではワクチン接種が進まない。世界保健機関(WHO)は2日、欧州のワクチン接種は受け入れ難いほど遅いと苦言を呈した。WHOによると、欧州連合(EU)の域内人口約9億人のうち、1回でも接種を受けたのは10%に過ぎない。
こうしたなか、フランスが3日から3度目のロックダウンを開始した。
さらにブラジルやインドなど経済規模の大きな新興国では爆発的な感染拡大に歯止めがかからない。変異ウイルスの問題もある。変異株に対してワクチンは万全ではないとされる。
OPECの減産縮小
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国から成る「OPECプラス」は1日の会合で、現行の日量700万ドル程度の協調減産を5月と6月に日量35万バレルずつ減らし、7月は40万~45万バレル減らすことを決定した。また、サウジアラビアも日量100万バレルの自主減産の規模を段階的に縮小する方針を明らかにしている。
米国などワクチン接種が順調に進んでいる国における原油需要の増加を見込んでの減産縮小だ。しかし、市場の一部は、世界全体の原油需要が想定ほど回復しないなか、供給が増える可能性があるとして懸念を表明している。
またそれとは逆に、ゴールドマン・サックスなどはOPECプラスの産油計画では夏季に原油市場の需給が逼迫するとみている。
ゴールドマンは原油需要の回復ペースはOPECプラスの想定を上回ると予想。OPECプラスの産油計画では21年7月から10月までの期間に日量200万バレルの原油の不足が発生する可能性があると分析する。
OPEC以外の産油状況
米国の対イラン経済制裁が緩和され、イランの原油輸出が増加する可能性を市場は意識し始めた。イランは制裁下にもかかわらず、すでに中国への輸出を拡大している。
米国のイラン核合意への復帰に向け、米国とイランの代表団が6日にウィーンに入り、仲介役の欧州連合(EU)などと別々に会合を開いて間接的な協議を行った。関係国は、米国の制裁解除とイランの核開発の制限をいかに進めるかを継続的に協議することで合意した。
イランは制裁解除後を見据えた生産能力の拡大に取り組んでいることが伝わっており、イランの外務次官は6日の協議の後、9日に再び会合が開かれる見通しと発言している。
一方、米国のシェールオイルについては、昨年以降の原油価格の回復にもかかわらず、コロナ禍前にみられた生産ペースを回復する可能性は低いとみられている。
シェールオイル業者は産油体制の最適化を従来よりも重視するようになっており、いかなる代価を払ってでも増産を追求するとの姿勢にはもはやない。
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