3M（MMM）、医療用マスクの生産枚数引上げ、原油価格下落に伴うプラスチック製品の製造費用低下が追い風へ

• 2020/12期1Q（1-3月）は売上高が前年同期比2.7％増、営業利益が同46.4％増、純利益が同45.0％増、調整後EPSが同2.7％減だった。
• 新型コロナウイルスの影響により、医療用マスクの需要のほか洗浄用品や食品安全関連製品、家の修繕用品などの需要が増加した。
• 医療用マスク「N95」の生産枚数引上げ、および原油価格下落による使い捨てプラスチック製品の製造費用低下が業績を後押ししよう。

What is the news?

4/28発表の2020/12期1Q（1-3月）は、売上高が前年同期比2.7％増の80.75億USD、営業利益が同46.4％増の16.63億USD、純利益が同45.0％増の12.92億USD。前年同期に重要訴訟関連の引当金を計上したことの反動減により、Non-GAAPの調整後EPSは同2.7％減の2.16USDだった。新型コロナウイルス感染拡大に伴い医療用マスクの需要が急拡大したほか、洗浄用品や食品安全関連の製品、家の修繕用品などの需要増加が売上高と利益を押し上げた。自動車部品やオフィス用品が減少したものの、ウイルスとの闘いや在宅勤務に必要な商品、または「巣ごもり」の生活を充実させる製品への関心が急増していることが示された。

セグメント別の業績は以下の通り。①安全と工業事業は、売上高が前年同期比1.0％減の29億USD、為替変動や事業買収・売却の影響を除く内部売上高が同2.2％増。②輸送と電子事業は、売上高が同5.0％減の22億USD、内部売上高が同3.0％減。③ヘルスケア事業は、売上高が同21％増の21億USD、内部売上高は同1.2％増。④消費者事業は、売上高が同4.6％増の13億USD、内部売上高が同6.1％増だった。

How do we view this?

新型コロナウイルス感染拡大による不確実性を考慮し、2020/12通期の会社計画を取り下げる一方、2020/12通期の設備投資計画を従来計画の16-18億USDから13億USDに縮小し、手元流動性を確保するため自社株買いを停止した。マスク製造で世界最大の同社は2020/1に医療用マスク「N95」の世界生産を年間11億枚とする計画を示していたが、2020/3に今後は年間20億枚に引き上げる意向を示した。新型コロナウイルスの流行が続くなか、医療用マスクは各国で安全保障上の重要な戦略物資と位置付けられており、同社の役割の重要性が高まろう。また、化石燃料である石油を原料とするプラスチック製品が環境面で問題とされつつも、新型コロナウイルス対応で使い捨てプラスチック製品の需要が拡大することに伴い、原油価格の下落が製造に係る費用の低下を通じて業績面で恩恵をもたらす面があることも注目されよう。2020/12通期の市場予想は売上高が前期比4.1％減の308.05億USD、当期利益が同2.3％増の46.76億USDである。

配当予想(USD) 5.88 （予想はBloomberg）
終値(USD) 145.73 2020/5/9

会社概要
1902年設立の世界的化学・電子素材メーカー。広範な産業分野で、5万5,000にのぼる製品を「安全と工業」「輸送と電子」「ヘルスケア」「消費者」の4つの事業セグメントを通じて提供する。

①安全と工業事業は、工業、電力市場や安全市場に関わり、研磨材、テープ・接着剤、電力市場関連製品などを取り扱う。②輸送と電子事業は、自動車や電子用製品などのOEM顧客向けビジネスや建設・建築関連市場などに関わり、自動車内外装・塗装関連、防塵マスクなどの安全衛生製品、フッ素化学製品、液晶ディスプレイ、電気・電子製品、業務用クリーニング製品、反射シートなどの安全セキュリティ製品などを取り扱う。③ヘルスケア事業は、医療から食品関連まで幅広くカバーし、医療用製品、歯科用製品、食品・衛生関連製品、経肺吸収製剤などの医薬品デリバリーシステムを手掛ける。④消費者事業は、暮らしに密着した製品群をカバーし、文具・オフィス用品、家庭用品を取り扱う。

企業データ（2020/5/12)
ベータ値 0.90
時価総額(百万USD) 83,823
企業価値=EV(百万USD) 102,750
3ヵ月平均売買代金(百万USD) 701.1

主要株主（2020/5） （％）
1.VANGUARD GROUP 8.78
2.ブラックロック 7.25
3.ステート・ストリート 7.20
（出所:Bloombergをもとにフィリップ証券作成）