貿易摩擦と貿易統計の動向
WTOのモノの世界の貿易総額は2016/11以降、2018/5まで前年同月比19ヵ月連続でプラス推移となった。ただ、3/1にトランプ大統領が鉄鋼やアルミニウムの製品に追加関税を課す計画を表明し、2018/3に前年同月比9.5%増と1桁成長に落ち込んだ。
中国や日本も大きく鈍化し、ブラジルや南アフリカなど新興国などにも影響が及んだ可能性がある。ただ、4月、5月の世界の貿易は再び増勢に転じているが、欧州は2018/5に伸びが急激に鈍化しており、ドイツやフランスなどの景気動向を注視したい。また、米中貿易戦争の統計への影響など2016/6以降のデータも注目したい。(庵原)
滑り出し好調、好決算相次ぐ!
2018/2Q(4-6月)のS&P500構成企業のEPSは前年同期比20%超の増益が見込まれている。アルファベット(GOOGL)、バイオジェン(BIIB)、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)などあらゆる業界で好決算が相次いでいる。
7/24現在、118社が決算発表を行い103社、87.3%もの企業が事前の市場予想を上回った。貿易摩擦の影響が懸念される一方、下院共和党は7/24、第2の減税案である「税制改革2.0」法案の概要を公表。個人と一部事業主の減税の恒久化を目指す内容となっている。良好な景気指標と決算が株価を押し上げる展開となりそうだ。(庵原)
企業と消費者でマインドに温度差
7/2発表の6月のISM製造業景況指数は、前月比1.5ポイント上昇の60.2と2ヵ月連続の上昇。7/5発表の6月の米ISM非製造業景況指数も、同0.5ポイント上昇の59.1と2ヵ月連続の上昇。製造業・非製造ともに市場予想を上回った。企業マインドは、4月に通商問題を巡る不透明感や関税が製造コストに与える影響への懸念などにより、著しく悪化したが、持ち直しが見られている。
一方、7/13発表した7月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は、同1.1ポイント低下。市場予想の99を下回った。所得や雇用の見通しは明るいものの、関税の影響への懸念を挙げる声が高まっているという。米国の消費者マインドの動向には注意したい。(増渕)
エネルギー独歩高の商品市況
商品の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数は、7/24時点で193.18。2017年末比では横ばいだが、5/23の206.37の高値から1ヵ月弱で約6.4%下落しており、足元では軟調に推移している。貿易摩擦への懸念や、中国景気の先行きに対する悲観などを背景に、農産物や非鉄金属、貴金属が年初から大幅に下落。
上昇基調だったエネルギー価格も、WTI原油が7/11に前日比5.0%安の大幅安。足元では60ドル/バレル台後半で推移。米国のイラン制裁再開を8/7に控え、米とイランの非難の応酬は激しさを増している。また、中国の米国産原油への追加関税も原油在庫の増加要因と見られている。当面の原油相場は神経質な展開となろう。(増渕)
大手金融機関は軒並み好業績
大手金融機関の2018/12期2Q(4-6月)は、ウェルズ・ファーゴ(WFC)を除く5社は2桁の増益と好調だ。税制改革などもあり、米国企業は投資を積極化。FRBによると、2018/4-6月期の企業向け融資の伸びは年率換算で7.7%。利上げの継続で貸出金利が上昇し、貸出利鞘も改善。また、大型M&Aなどで投資銀行業務の伸びも目立つ。
株価は、過去52週でJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)など商業銀行が市場リターン(S&P500)を上回るパフォーマンスだった一方、ゴールドマンサックス・グループ(GS)やモルガン・スタンレー(MS)など投資銀行は市場リターンを下回っている。好業績が確認できたことにより、リターン・リバーサル効果も期待できよう。(増渕)
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