花の無い桜を見上げて、満開の日を想う
米国ウィークリー9月3日号
- 突き詰めれば「投資」とは「あるべき望ましい将来の姿をイメージして困難を乗り越えながらもそこに辿りつくプロセス」なのだろうか。予定どおりにトランプ政権は9/1より対中制裁関税「第4弾」として約1,100億ドル分の製品に15%の追加関税を課し、中国側も同日に約750億ドル分の米国からの輸入品に追加報復関税をかけた。その一方、中国側からの「貿易戦争のエスカレートに断固反対する。冷静な態度で協議と協力をし、問題を解決したい」、およびトランプ大統領からの「これまでと違うレベルで貿易協議を再開する」などの発言を受け、8/26週の株式市場は「米中貿易協議の合意への期待」から買い戻され、NYダウで8/28の週足安値25,637ドルから8/30の同高値26,514ドルまで上昇した。
- 株式市場にとっては米中貿易協議の合意は望ましいが、来年の大統領選挙に向けて票固めをしたいトランプ大統領、および「安全保障」の観点から対中国強硬策を推進したい共和党保守派にとっては必ずしも望ましいものではない。米国経済が拡大する前提が崩れない限り、短期的な株価下落も厭わない立場にあるだろう。その点では、トランプ政権にとって重要なのは「景気拡大の持続」であり、その鍵を握るFRBの金融政策に係る利下げ要求が今後も強まるだろう。
- FRBの金融政策に関しては、8/30に発表された7月の米個人消費支出(季節調整済み)は前月比0.6%増と底堅く、7-9月期に向けて個人消費の堅調さが裏付けられた。その一方、PCEコア価格指数は前年同月比1.6%上昇とFRBの物価目標である2%を下回り続けている。9/17-18の次回FOMCに向けて、消費の堅調さに着目すれば利下げの必要性が薄れ、物価伸び悩みに着目すれば貿易問題のリスクに備えて利下げが望ましいという話に繋がりやすいと言えるだろう。
- ただし、データ主導経済における「価格」の意義が変化していることをFRBが見逃している懸念は残る。売り買いの需要と供給が「価格」を通じてマッチングされるところに市場の主要な役割があった時代から、ユーザー属性や取引に係る大量かつ多様なデータを基にして需要と供給がマッチングされるデータ主導型の市場へと構造変化が起きつつあり、「価格」の相対的価値が低下しつつあるのが時代の流れのようにも見える。更に、大手プラットフォーマーが提供するクラウド・データセンターのシェアリングなどにより大規模な設備投資の必要性も薄れつつある。時代の大きな構造変化が起きる中、FRBが想定するよりも経済が均衡する金利や物価が大幅に低くなる可能性も考えておきたい。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(8/30現在)
■主な企業決算の予定
●9月4日(水):コパート
■主要イベントの予定
●9月3日(火)
・ボストン連銀総裁講演
・英議会再開
・ISM製造業総合景況指数(8月)、建設支出(7月)
・ユーロ圏PPI(7月)、南アGDP(2Q)、韓国GDP(2Q)
●9月4日(水)
・ニューヨーク連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁、シカゴ連銀総裁講演
・FRBボウマン理事とセントルイス連銀総裁がイベントで開会の挨拶
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
・議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」、米中関係に関する公聴会
・自動車販売(8月)、貿易収支(7月)
・ユーロ圏総合・サービス業PMI(8月)、ユーロ圏小売売上高(7月)、中国財新サービス業・コンポジットPMI(8月)、豪GDP(2Q)
●9月5日(木)
・ADP雇用統計(8月)、非農業部門労働生産性(2Q)、新規失業保険申請件数(8月31日終了週)、製造業受注(7月)、ISM非製造業総合景況指数(8月)
・独製造業受注(7月)
●9月6日(金)
・独家電見本市「IFA」開幕(ベルリン、11日まで)
・雇用統計(8月)
・ユーロ圏GDP(2Q)、独鉱工業生産(7月)
●9月7(土)
・第76回伊ベネチア国際映画祭授賞式
・中国外貨準備高(8月)
●9月8日(日)
・中国貿易収支(8月)
●9月9日(月)
・消費者信用残高(7月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 国際公認投資アナリスト 笹木和弘
公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員補 増渕透吾
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