アリババ株が2営業日で16%高 中国政府との和解観測 他銘柄の値動きは?
アリババの株価が急騰している。中国政府との和解が成立したとの観測が背景にあり、テンセントなど他銘柄も値上がりしている。
中国のテクノロジー企業の株価が急伸している。電子商取引大手のアリババ・グループの事業再編計画が明らかになり、中国当局によるテクノロジー企業への締め付けが弱まったとの見方が広がっているからだ。アリババの株価は事業再編計画が報じられた28日以降の2営業日で16%上昇。一時は2020年秋の最高値から7-8割も安い水準となっていただけに待望の好材料だといえる。アリババ同様に株価が大幅下落していた他のテクノロジー企業の株価も値上がりしており、投資家の期待が高まっている。
テンセントも2営業日で6.1%値上がり
アリババの事業再編計画は28日に明らかになった。アリババが事業を6つの子会社に振り分け、それぞれが独自に資本調達などに取り組み、新規株式公開(IPO)も検討するという内容だ。アリババのニューヨーク証券取引所での株価は28、29日と2営業日続伸。29日の終値(99.9ドル)は27日終値比で16.0%高だ。また、香港証券取引所では会話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」などを展開するテンセント・ホールディングスの株価が2営業日で6.1%上昇。電気自動車(EV)大手のBYD(比亜迪)の株価も同じく4.8%値上がりしている。
アリババの事業再建計画が注目を集めるのは、アリババが2年半前、グループ会社の金融大手アント・グループのIPOを断念しているからだ。アントは2020年11月5日に香港と上海で上場し、円換算で約3兆6000億円を調達する計画だったが、直前になって上場延期を発表。アリババ創業者のジャック・マー氏が中国当局から事情聴取を受けたためで、当局はマー氏が10月の講演で金融当局の規制の在り方に苦言を呈したことに不満だったとされている。
アリババの株価は一時は8割安も
マー氏はその後、表舞台から姿を消し、アリババの株価は急落した。ニューヨーク証券取引所での株価は2020年10月27日に317.1ドルの最高値をつけていたが、2年後の2022年10月24日には63.2ドルまで値下がりした。その後は中国政府がゼロコロナ政策の段階的な解除に乗り出し、中国経済の回復期待が高まったこともあって株価は復調。それでも事業再編計画への期待が集まった29日の終値は最高値の3割程度の水準でしかない。
中国当局はIT業界全体に監視の目を強めたため、他のテクノロジー企業の株価もアリババ同様の値動きをたどっていた。ナスダック証券取引所に上場している検索大手バイドゥの株価は2021年2月に最高値を付けた後、ゼロコロナ政策解除が始まる直前まで78%下落。香港証券取引所でも、テンセントと、スマートフォン大手のシャオミの株価がほぼ同時期に70%台半ばの値下がりをみせた。フードデリバリー大手のメイチュアン(美団)の株価は2022年3月に最高値から77%下落した後、一時は持ち直したが、やはり株価は戻り切っていない。一方、BYDの株価はEV事業の成長への期待を背景に値上がりしてきたが、やはり2022年秋には最高値の半分まで下落している。
創業者のマー氏は中国本土に帰還
こうした中でアリババが事業再編計画を公表したことで、投資家の間ではアリババと中国当局との和解が成立したとの期待が広がる。創業者のマー氏は事業再編計画発表直前に中国本土に戻ったと報じられているほか、IPO断念に追い込まれたアント・グループも1月に105億人民元(約2000億円)の増資を中国当局から認められたことが分かっている。中国は3月の人民代表大会で2023年の実質成長率目標を5%前後に設定しており、テクロノジー企業の復活に期待しているとも指摘されている。
ただ、政府による不透明な意思決定が企業活動に大きな影響を及ぼす実態は中国企業が抱えるリスクの現れでもある。また、急激に進んだ物価上昇が世界経済に及ぼす影響の先行きも不透明で、中国テクノロジー企業の株価は今後も荒い値動きにさらされる可能性もある。
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