金価格、米大統領選混迷の影響はいかに
2020年の米大統領選は勝者がすぐに確定しない公算が大きく、投開票日から新大統領就任までの期間は、これまでの歴史で最も不安定になる可能性が高い。混迷が金価格にいかなる影響を及ぼすかを考察する。
2020年の米大統領選は勝者がすぐに確定しない公算が大きく、投開票日から21年1月20日の新大統領就任までの期間は、これまでの歴史で最も不安定になる可能性が高い。記事では混迷が金価格にいかなる影響を及ぼすかを考察する。
トランプ氏が勝利宣言なら
想定されるシナリオにトランプ大統領による早々の勝利宣言がある。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急増している郵便投票は民主党支持者の割合が高く、一方、共和党支持者の多くは選挙当日に投票所に足を運ぶとみられている。
米連邦最高裁は19日、激戦州の1つであるペンシルベニア州で郵便投票の集計を、投開票日までの消印があることなどを条件に、投開票日の3日後の11月6日到着分まで認める判断を示した。
別の激戦州ノースカロライナ州についても控訴裁が20日、11月12日到着分まで認める判断を示した。また、ミシガン州では投票用紙の必着日が11月17日に決まった。
米紙ワシントン・ポストは、最終結果が出るのは投開票日の数週間後との見方を示している。
投票所での開票の方が速く進むことで、投開票日はトランプ氏が優勢になる可能性が高い。トランプ氏はそうしたタイミングで勝利宣言を行い、最終的にバイデン氏がより多くの選挙人を獲得した場合でも、郵便投票おける不正を理由に敗北を認めずに法廷闘争に持ち込む構えだ。
このように不透明感が高まる状況においては、投資家は一時的に金よりも現金を保有する可能性がある。
嵐が過ぎ去り、先が見通せるようになるまで安易な投資はしない、いわゆる「Cash is king」の考え方だ。株式とともに、金にも手じまいによる下押し圧力がかかる可能性がある。
もともと、足元の金ETFの現物保有高と先物相場の買い越しの水準は大きく、金は手じまい売りが出やすい状態にある。
ニューヨーク証券取引所に上場している世界最大規模の金ETF「SPDRゴールド」の現物保有高は10月23日時点で1263.80トン。9月に約7年半ぶりの高水準となる1278.82トンを記録しており、その後も高い水準の保有を維持している。
また、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表する週間建玉明細でも、ニューヨーク金先物市場の投機筋の買い越しは10月20日時点で24万9604枚と7月以来の高い水準にある。
バイデン氏の施策と金価格
大方の予想どおりにバイデン氏が大統領に選出された場合、金価格はいかに動くか。
選挙期間中はバイデン候補が有利との見方が強まるなか、国債増発による拡張的な財政政策に焦点が当てられた。結果、金利がじり高となり、金価格には下押し圧力がかかった。
米超党派のシンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」が最近発表した試算によると、バイデン氏が主張する環境投資や医療保険改革といった主要な施策は10年で10兆ドル近くの支出を伴う。法人税などの増税で4兆3000億ドルの収入が見込まれるため、5兆6000億ドルが財政赤字の拡大だ。
いわゆる「ブルーウェーブ」が実現すれば、バイデン氏の掲げる施策が議会で承認される可能性は一層高まる。留意すべきはブルーウェーブがもたらす期待インフレ率の上昇だ。
財政支出による景気刺激や財政ファイナンスによる通貨供給量の増大は期待インフレ率の上昇につながる。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でゼロ金利政策をこれまでの想定よりも長い期間続けると表明。名目金利が抑制される中で期待インフレ率が上昇すれば、実質金利の低下がもたらされる。
バイデン氏の大統領就任後、ほどなくして民主党案に近い2兆ドル超の財政刺激策を盛り込んだ追加経済対策法案が可決される可能性が高い。このタイミングで財政ファイナンスの強化に対する意識が一段と高まり、実質金利の低下とともに、金価格への上向きの圧力が顕在化する可能性がある。
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