アストラゼネカ製を英・印が承認 アンジェスなど国内勢の進捗は?【製薬会社のワクチン開発】
(1月4日更新)コロナワクチンの接種が一部で始まった。ファイザーやモデルナなどの欧米の主要プレーヤー、さらにアンジェスを含む国内勢の開発の進捗状況をまとめた。
【更新情報(1月4日更新)】アストラゼネカとモデルナ、KMバイオロジクスの情報を更新しました。
コロナワクチンの接種が一部で始まった。ファイザーやモデルナなどの欧米の主要製薬プレーヤー、さらにアンジェスを含む国内勢の開発の進捗状況をまとめた。
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モデルナ
接種開始
米国のバイオ製薬モデルナはメッセンジャーRNA(リボ核酸)と呼ばれる遺伝子の一種を人工的に作成して免疫反応を引き起こす仕組みのワクチンを米国立衛生研究所(NIH)などと共同で開発。
これまでに臨床試験(治験)で得られたデータの分析により、ワクチンは94.1%の有効性があるとの結果を2020年11月30日に発表した。
それによると、3万人を超える治験対象者のうち、半数にワクチンを投与し、残りの半数にはプラセボ(偽薬)を与えた。そのうち新型コロナに感染した196例を調べたところ、185例がプラセボの投与者でワクチン接種者は11例だった。重症化した30例は全てプラセボの投与者という。
米国で12月21日、モデルナのワクチンの接種が始まった。
米政府はモデルナのワクチンを当初1億回分購入していたが、同月11日に追加購入して計2億回分を確保した。まずは590万回分を医療従事者や介護施設の居住者に優先的に接種する予定。
また、カナダ当局もすでに同社のワクチンを承認している。英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)も審査を開始しており、近く承認する可能性がある。
モデルナは21年には5億~10億回分のワクチンを供給できる見通し。
日本政府は秋までに2500万人分の供給を受ける契約を結んでいる。このうち2000万人分は1~6月に供給されることになっている。
モデルナのワクチンはセ氏マイナス20度の環境で最大6カ月の保管が可能。また通常の冷蔵庫で温度管理可能な2~8度では最大30日の保管が可能となる。
ファイザー
接種開始
米国のファイザーは、モデルナと同様にメッセンジャーRNAの技術を用いたワクチンをドイツのビオンテックと開発している。
ファイザーは20年11月18日に第3相臨床試験の最終分析での予防効果が95%に達したと発表した。
治験に参加した約4万4000人のうち170例の新型コロナ感染者を分析したところ、ワクチン接種者は8例にとどまった。うち重症は1例という。残りの162例はプラセボ接種者で、このうち9例は重症だった。
英国で12月8日、ファイザーが供給するワクチンの接種が始まった。国民への大規模なワクチン接種は先進国で初めてとなる。
米国でも同月14日、ファイザーのワクチンの接種が医療機関などで始まった。その後、欧州連合(EU)加盟国でも接種が始まっている。
ビオンテックは同月22日、英国で感染が拡大している変異種についても現行のワクチンが有効な可能性が非常に高いとの認識を示した。必要な場合は、変異種に対応したワクチンを6週間程度で開発できるという。
ファイザーのワクチンはセ氏マイナス60~80度の環境で最大6カ月の保管が可能。コールドチェーン(低温物流)の確立がカギとなる。2~8度では最大5日の保管が可能だ。
21年には最大13億回分の生産が可能としている。日本政府は6月末までに6000万人分の供給を受けることで合意している。
日本への供給分は空輸される見込み。ワクチンの専用容器は、ドライアイスと温感センサーを使い、マイナス70度の温度を維持する。全地球測位システム(GPS)で事前に計画した通りの輸送経路をたどっているかを確認し、品質保持に努める。日本当局と到着後の流通方法について今後調整するという。
アストラゼネカ
英などが承認
英国のアストラゼネカはウイルスベクター(アデノウイルス)を用いたワクチンを英オックスフォード大学と開発する。
20年11月23日、第2/3相臨床試験の中間分析で平均70%の効果が確認されたと発表した。これは世界で最大6万人を対象に行われる治験のうち、英国とブラジルでの暫定的な結果という。
それによると、最初に1回分の半分の量を投与し、1カ月後に1回分を追加したグループ(約2700人)で90%の効果を確認。一方、2回分を1カ月おきに投与したグループ(約8900人)は62%。平均では70%の効果を確認した。
しかし、その後に90%の効果があったグループについて、本来は最初に1回分を投与する過程を、誤って半分の量を投与していたことが分かったという。アストラゼネカは追加治験を実施し、投与量が少ない方が効果が出たことについて確認するという。
さらに、ワクチンの開発促進を目指す米トランプ政権の「ワープ・スピード作戦」の責任者は、90%の効果を確認したグループの年齢は55歳以下だったとして、高齢者への有効性に疑問を呈している。同社は年齢別の有効性についても検証するという。
英政府は12月30日、アストラゼネカが開発したワクチンを承認したと発表。同社製ワクチンの承認は世界初となる。1月4日に接種を始める。
これに続き、インド当局も今月3日、アストラゼネカのワクチンを承認した。
英メディアによれば、同社は変異種に対しても効果があるとの認識を示している。
アストラゼネカのワクチンは通常の冷蔵庫で保管が可能という。日本政府は6000万人分の供給を受けることで合意している。このうち1500万人分を3月にかけて受け取る予定。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
米国のJ&Jは、アストラゼネカと同様にウイルスベクター(アデノウイルス)を用いたワクチンを開発しており、約6万人を対象とする大規模な第3相臨床試験を行う。
原因不明の疾患の発生を受けて、10月に治験を一時中断したが、これまでに再開している。
J&Jのワクチンは1回の投与で効果を出すことを目指している。
アンジェス
第2/3相臨床試験
創薬ベンチャーのアンジェス<4563> は大阪大学と共同でDNAワクチンを開発している。
アンジェスは20年12月8日、第2/3相臨床試験を開始したと発表した。期間は20年11月~22年3月。接種は21年3月ごろに完了する予定で、試験期間は接種後52週間のフォローアップ期間が含まれる。
第2/3相臨床試験では、第1/2相試験での用法用量における安全性と免疫原性を症例数を増やして評価する。
第2/3相臨床試験の目標症例数は500例。接種間隔を2種(2週間間隔で2回接種を250症例、および4週間間隔で2回接種を250症例)で、それぞれプラセボを50症例を含むという。関西と関東の8施設で実施する。
アンジェスはこれまでに第1/2相臨床試験で60人を対象にワクチンを投与しており、試験成績を総合的に判断する速報結果を12月までに公表するとしていた。しかし、11月23日付のリリースで、当初の見込み以上に有効性としての免疫原性の分析に時間を要しており、データが揃い次第発表すると方針を変更した。
500人を対象とした第2/3相臨床試験の後に、発症予防効果を検証するための第3相臨床試験を実施する予定。第3相臨床試験は、海外を含む感染が流行している地域も視野に入れ、1万~数万人規模を想定している。
さらに化学メーカーのダイセルと共同開発した無針注射器を用いた臨床試験も実施する。阪大が22日明らかにした。
無針注射器は少量の火薬を用いて皮膚の浅い部分にワクチンを送り込む仕組みで、投与量を10分の1程度に抑えられる可能性がある。初期段階の治験として成人20人への接種で安全性などを確認する予定。
アンジェスはDNAワクチンの製造をタカラバイオ<4974>に委託しており、4月までに20万人分の製造を予定している。治験の結果次第で量産を拡大する可能性があり、タカラバイオでは十分な生産体制の構築を急務としている。
タカラバイオの仲尾功一社長は20年11月10日、本社(滋賀県)の再生医療製品の研究・製造施設に新たに95億円を投じて新型コロナワクチンの製造体制を整える計画を明らかにした。この全額をワクチン生産などに資金援助する国の補助金で賄うという。
塩野義製薬
第1/2相臨床試験
塩野義製薬<4507> は子会社のUMNファーマが独自に確立したバキュロウイルス・昆虫細胞系を用いたたんぱく質発現技術を基盤とする組換えたんぱく質ワクチンの開発を進める。
塩野義は16日、国内で第1/2相臨床試験を開始し、同日に投与を行ったと発表した。200例以上の日本人成人を対象に、複数容量の抗原タンパクなどの組み合わせからなる無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を行う。
少人数での安全性・忍容性を確認する第1相パートと至適用量の検討を行う第2相パートで、ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の安全性、忍容性、免疫原性を接種後1年間追跡評価するという。
速報データは2月末から順次取得する見込みとしている。
治験は国内製薬ではアンジェスに続き2例目。塩野義は21年末までに生産能力を年間3000万人分以上にする計画だ。
このほか、国内では治験支援大手アイロムグループ<2372>子会社のIDファーマが、国立感染症研究所と連携してウイルスベクターワクチンを用いたコロナワクチンの開発を進めており、また明治ホールディングス(HD)<2269>傘下でワクチン製造のKMバイオロジクスが不活化ワクチンを開発。治験を今月始める見通しだ。
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