荒れ模様の株式市場~足元を固めた投資も
米国ウィークリー2019年8月14日号
- 株式市場に要注意の台風(ハリケーン)が接近しつつあると言える状況だろうか。8/1のトランプ大統領による対中「関税第4弾」発動宣言に端を発した米中問題の荒波が、8/5の米国財務省による中国の「為替操作国」への認定、それを受けて中国商務省が制裁として米農産品の新規購入一時停止を発表するなど報復合戦のエスカレートという形で株式市場を翻弄した。このような動きが投資家心理を冷やし、8/7にはNYダウが25,440ドルの安値(7/16史上最高値から1,958ドル安)を付けたが、その後は中国が人民元レートの対ドル基準値を市場実勢より元高に設定したこともあり通貨戦争に発展する懸念が薄らぎ、NYダウが8/9に26,413ドルまで戻るなど一時的に落ち着きを示した。ところが、週明けの8/12には中国の元安容認懸念の再発、および香港の逃亡犯条例改正案に係る大規模抗議活動が香港国際空港発着便の全便欠航にまで混乱が拡大したことなどから、NYダウが再び26,000ドルを割る展開となった。
- 市場が景気後退のシグナルとして特に懸念している米国債の10年債と2年債利回りにおける「逆イールド」に関し、8/12には利回り差が一時0.05%ポイントまで縮小した。8/1発表の7月ISM製造業景況指数(51.2)、および8/5発表の7月ISM非製造業指数(53.7)とも3年ぶりの低水準であることから、10年国債利回りも2016/7に付けた1.32%が視野に入ろう。FRBによる政策金利の利下げ姿勢が明確になることで2年債利回りが低下して10年債と2年債の逆イールドが回避されることが望まれるが、もし仮に一時的にせよ逆イールドが実現した場合にはVIX指数の上昇とともに株式市場への短期的ショックはあり得よう。しかし、逆イールド懸念を払拭する上でも次回FOMCでの大幅利下げが現実味を帯びてくるであろうし、「利下げ期待」により株価を押し上げ易くなることも考えられよう。
- 8/2発表の7月雇用統計では平均時給の伸び率(前年同月比)が3.2%と好調であり、2019/7まで12ヶ月連続で3.0%以上と息の長い好調さを示している。その一方で、消費者物価指数(CPI)の上昇率(前年同月比)は2019/6まで7ヵ月連続で2.0%以下と伸び悩んでおり、消費が伸びやすい環境にある。特に米国債利回りが低下基調にある中では債券利回りと配当利回りのイールドスプレッドに注目が集まりやすい。その意味では、足元の堅調な消費および配当利回りに着目した投資が当面の米国株投資においては堅実と言えそうだ。消費関連で1株当り配当(DPS)が伸びている高配当利回り銘柄が狙い目か。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(8/12現在)
■主な企業決算の予定
●8月13日(火):アドバンス・オート・パーツ
●8月14日(水):メーシーズ、アジレント・テクノロジー、シスコシステムズ、ネットアップ
●8月15日(木):ウォルマート、エヌビディア、アプライド・マテリアルズ
●8月16日(金):ディア
●8月19日(月):エスティローダー
■主要イベントの予定
●8月13日(火)
・CPI(7月)、家計債務残高(4-6月)
・独CPI(7月)、独ZEW景況感指数(8月)
・シンガポールGDP(2Q)
●8月14日(水)
・輸入物価指数(7月)
・ユーロ圏GDP(2Q)、ユーロ圏鉱工業生産(6月)、独GDP(2Q)
・中国小売売上高、工業生産、固定資産投資(7月)
●8月15日(木)
・小売売上高(7月)、新規失業保険申請件数(8月10日終了週)、鉱工業生産(7月)、NAHB住宅市場指数(8月)、企業在庫(6月)、対米証券投資(6月)
・中国新築住宅価格(7月)
●8月16日(金)
・住宅着工件数(7月)、ミシガン大学消費者マインド指数(8月)
・マレーシアGDP(2Q)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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