アリババ・グループ・ホールディング（BABA）、コロナ禍を克服してEコマースが盛り返す。新分野のクラウド、宅配、テレワークは「巣篭もり」が追い風へ
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BLOOMBERG BABA:US | REUTERS BABA.N
- 2020/3期4Q（1-3月）は売上高が前年同期比22.2％増、純利益が前年同期比87.7%減。ただし、調整後の純利益は同11.1％増だった。
- 2020/3通期のアクティブ消費者数は9.6億人に達し、うち中国は前期比7,200万人増の7.26億人に上った。5年前に掲げた2020年度までの全マーチャント（店舗）の GMV（流通総額）を1兆USDとする目標をクリア。
- 2021/3期の売上高会社計画を前期比27.5％増の6,500億元としている。4月以降の売上高はグループ全体で幅広い回復を示している。
What is the news?
2020/3期4Q（1-3月）は、売上高が前年同期比22.2%増の1,143.14億元、純利益が同87.7%減の31.62億元。ただし、のれん償却や、相場急変に伴う上場企業への株式投資収益に係る評価損の拡大といった一時的要因を除くNon-GAAPの調整後純利益では同11.1％増の222.87億元。コロナ禍に絡むベンダー支援費用が嵩んだものの、売上の6割を占める中国Eコマース小売が同21.3％増収となったことが業績に寄与した。調整後フリーキャッシュフローは、前年同期の107.14億元から▲42.14億元へ赤字転落。ただし、AliExpress（国際的な消費者向け電子商取引サイト）決済サービスの1回限りの再編を除けば、4Qのフリーキャッシュフローは19.77億元と黒字を確保した。
グローバルにおける同社の年間アクティブ消費者数は9.6億人に達し、うち中国は前年比7,200万人増の7.26億人に上った。また、同社の全マーチャントのGMV（流通総額）も7兆53億元（約1兆USD）に達し、5年前に掲げた2020年度までにGMVを1兆USDとする目標をクリアした。
How do we view this?
中国経済が減速傾向を強める中、6/15に中国国家統計局が発表した2020年1-5月小売売上高も同様に前年同期比13.5%減と減速を示している。一方で、1-5月のネット販売は同11.5％増と底堅い動きを見せている。「巣籠もり・デジタル化」が当面持続するとの観測から、対面販売からネット販売へのパラダイムシフトが今後一層加速するとみられる。
昨年9月に創業20周年を迎えたアリババグループは、今後5年間の戦略として「10億人以上の中国ユーザーにサービスを提供」、「グローバル化への取り組みを拡大」、「グループのプラットフォームで10兆元以上の消費（売上）達成」を掲げている。2020/3期の中国Eコマース小売が前期比34.4％増収となり、中国ネット販売全体の同19.5％増を大きく上回ったことを踏まえ、5ヵ年ビジョンは射程範囲にあるとみられる。
2021/3通期の売上高について前期比27.5％増の6,500億元の会社計画を掲げている。足元では、TモールのGMVが4月以降順調な回復を見せるほか、飲食店再開に伴いデリバリサービスのウーラマ（Ele.me）の売上高も前年比プラス圏での推移など、グループ全体で回復を見せている。次の5ヵ年に向けて更なる時価総額の拡大が期待されよう。
配当予想（元） 0.00 （予想はBloomberg）
終値（USD） 217.03 2020/6/15
会社概要
1999年に設立。世界最大の流通総額を持つオンラインモバイルコマースカンパニー。「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる」ことをミッションとし、世界中の価値ある商品やサービス、エンタテイメントコンテンツを、Eコマースなどのオンラインチャネルと、実店舗や宅配などのオフラインチャネルを通じて提供。さらに、データテクノロジーを駆使し、マーケティングから物流、決済に至るまでのサービスを提供している。
2003年に開設された「淘宝網（タオパオ）」は、ビッグデータ分析によって最適化された、魅力的でパーソナライズされたショッピング体験を楽しめるC2C（顧客間） 電子商取引プラットフォームである。
2013年に開設された「天猫（Tモール）」は、中国No.1のB2C（企業対顧客）ECプラットフォーム。越境ECサイトのTmall Global（天猫国際）と合わせた累計流通額は円換算で約84兆円に達し、毎月の利用者が6.99億人に上る（2017年 ）。電子決済システムは「支付宝（アリペイ）」、クラウド事業は「阿里雲（アリババ・クラウド）」など。ソフトバンク・グループが大株主である。
企業データ（2020/6/16)
ベータ値 0.82
時価総額（百万USD） 582,231
企業価値=EV（百万USD） 546,161
3ヵ月平均売買代金（百万USD） 3,881.7
主要株主（2020/6） （％）
1.ソフトバンクグループ 25.21
2.ユン・マー 2.46
3.APN LTD 2.41
（出所:Bloombergをもとにフィリップ証券作成）
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本レポートの作成者：公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト 笹木和弘
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