加速する現金化の流れと米ドル高
外為市場では米ドルを現金で保有する動きが加速しています。現金が最も選好される現在の状況は、投資家の不安心理が最高潮に達していることを示唆しています。この状況を打破するためにはウイルス相場の終息と大規模な財政政策の導入が必須条件ですが、それまでは米ドルを選好する状況が続きそうです。詳細はマーケットレポートをご参照ください。
加速するボラティリティの上昇と現金化の動き
18日の米国株式市場は再び急落した。ベンチマークであるS&P500指数は一時約10%近く下落し、サーキットブレーカーが発動された。ボラティリティ(=20日間の標準偏差を年率換算した値)は86.11%と、2008年の世界金融危機の水準を突破。1987年に発生したブラックマンデー以来の水準(103.06%)を視野に上昇基調を維持している。
一方、米債市場では2年債から20年債の各利回りが総じて上昇する展開となった。また、NY金先物相場は前日比47.9ドル安と急反落した。リスク資産も安全資産も同時に売られる現象は、多くの投資家や企業が現金、特に米ドルを現金で保有する動きを加速させているからである。昨日のドル円の動きもこの状況を反映している。通常、リスク回避局面では「円買い>米ドル買い」のトレンドパターンが多く見られた。しかし、昨日のドル円はむしろ108円台へと上昇(高値108.65)。「米ドル買い>円買い」の逆転現象が発生している現在の状況は、最も流動性の高い米ドルを現金で保有することが最大のリスクヘッジであると、世界中の投資家が考えていることの証左だろう。言い換えれば、それだけ先行き不透明感に対する懸念が高まっている、ということである。それ故S&P500%指数のボラティリティが世界金融危機の水準を突破したと考えられる。
S&P500指数の動向
加速する米ドル高
3月9日以降、米ドル買い圧力が高まり、その影響がドル円にまで波及している現在の状況を考えるならば、今回のウイルス相場が終息するまで、外為市場では2つの土台-ひとつは先行き不安という土台、もうひとつは米財政政策に対する期待という土台-が支えとなり米ドル高優勢の展開が続こう。対新興国通貨やオセアニア通貨での米ドル高は言うに及ばず、原油価格が18年ぶりの安値水準まで低下している状況を考えるならば、カナダドルに対しても米ドル高が進行する展開が予想される。この点は通貨オプション市場のリスクリバーサルも示唆している。1か月物は今月上旬以降急上昇している。この状況は、市場参加者が今後1か月の間に米ドルがカナダドルに対して上昇することを予測しているということである。また、新興国通貨では原油価格との相関性が高いロシアルーブルやメキシコペソでも米ドル相場が堅調に推移すると思われる。
米ドル/カナダドル(USD/CAD)の動向
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