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ユーロ円、年初来で10%高 ECB物価高警戒 日欧の賃金事情に差も

ユーロ円相場でユーロ高が進行している。ECBは賃金高を背景とした物価上昇への警戒を緩めず、日本との差が意識されている。

出所:ブルームバーグ

円安ユーロ高の進行が加速している。16日のユーロ円相場は1ユーロ=154円台後半まで上昇し、昨年末比で10.2%高の水準となった。日本銀行は16日に大規模金融緩和策の維持を決める一方、欧州中央銀行(ECB)は15日に利上げを決定。さらに2025年までの物価見通しを引き上げるサプライズもあったことが、日欧の金利差拡大を意識させた。ECBのラガルド総裁は賃金上昇が物価を押し上げる要因となっていることに警戒感を示しており、日欧が抱える経済事情の異なりも印象づけられている。

ECB理事会後、円安ユーロ高に拍車

ユーロ円相場(チャート)ではECB理事会の結果が発表されると、円安ユーロ高に拍車がかかった。日本時間16日未明には153.6円まで上昇し、利上げ発表前から1円弱のユーロ高が進んだ。また、日本銀行が16日昼に大規模金融緩和の維持を決め、植田和男総裁の会見が進むと、一時、154.6円まで値上がりした。金融情報会社リフィニティブのデータによると、昨年末(140.3円)からは10.2%高い水準だ。円安ユーロ高はECBの利上げ決定前、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内2度の利上げを示唆した段階から進んでいた。

ECBが0.25%の利上げを決めたことは市場の予想通り。ラガルド氏が記者会見で7月の利上げについて「十分にありえる」と述べたことも想定内だった。一方、ECBが示した経済見通しで物価上昇率の予想が引き上げられたことは意外感をもって受け止められた。2023年の消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率の見通しは、エネルギーと食品を除いたコア指数で5.1%とされ、3月時点の予想から0.5ポイント増加している。

ラガルド総裁、物価高の長期化を警戒

ECBの見通し引き上げがサプライズとなった背景には、ユーロ圏のCPIが順調に低下してきた実績がある。欧州連合(EU)統計局が発表した5月のCPI速報値の前年同月比伸び率は、総合指数で6.1%。2022年10月の10.6%から着実に低下してきた。食品とエネルギー、酒類、タバコを除いた指数の伸び率も2か月連続での低下をみせている。

ユーロ圏の物価上昇率の推移とECBの予想

それでもラガルド氏は、経済見通しで2025年のコア指数の上昇率が2.3%になっていることなども踏まえ、「この物価見通しの結果には全く満足していない」と強調した。物価上昇率2%の達成に時間がかかりすぎることが、ECBの警戒感を強めているかたちだ。

リフィニティブによると、日本時間16日午後2時すぎの金融市場の動向からは、投資家は年内に0.25%の利上げが2度行われることを見込んでいると推計される。

「賃金高が物価上昇に重大な影響」

また、ラガルド氏は記者会見で高い物価上昇率に関して、「賃金が重大な影響を及ぼしている」と指摘した。ユーロ圏経済は2023年1-3月期まで2四半期連続のマイナス成長に陥ってる一方で、「従業員1人あたりの賃金は1-3月期に5.2%上昇した」と述べ、「この労働市場における完全なる謎を可能な限り注視し、分析していく」としている。

一方、日銀の植田和男総裁は賃上げ率の高まりが物価上昇率を上振れさせる可能性を指摘しながらも、大規模金融緩和の解除には及び腰の姿勢を示してきた。物価上昇への警戒を解かないECBとは対照的な日銀の姿は今後も円安ユーロ高要因として意識されそうだ。

(16日午後4時30分にユーロ円相場のデータを更新)


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