FRBとトランプ大統領への期待と二番底
米国ウィークリー 2020年3月17日号
- FRBに株式市場の守護者の役割を求めるべきではないのだろうか。3/16の日本時間早朝、FRBが臨時の会合を開き、政策金利を一気に1%引き下げて0-0.25%の範囲とし、事実上のゼロ金利政策に踏み切った。それに加え、国債などを7,000億ドル買い入れて市場に大量の資金を供給する量的緩和の再開も決めた。これによって株式市場が落ち着きを取り戻すことが期待されたものの、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)先物の時間外取引は前日終値比1,000ドル超安で反応した。FRBは株式市場のためではなく家計や企業を中心とした実体経済の支援を目的としているとはいえ、FRBが持てる武器をすべて使って対応をしているように見えるにも関わらず、株式市場が好感する様子が見られなかった。3/9-13の週のNYダウが前週末比2,679ドル安の23,185ドルで引け、5日間の前日終値比の値幅の1日当たり平均が1,800ドル近くに達するまで荒れ狂う相場の変動を鎮められる術はもはや無いものとあきらめるしかないのだろうか。
- しかし、ゼロ金利であれば財政支出の拡大に対応して大量の米国債を低コストで発行できるという面もある。トランプ大統領は3/13に最大500億ドルの財政出動を可能とする国家非常事態を宣言。金融政策の次はトランプ大統領による積極的な財政政策がまだ残されていると期待も市場では高まろう。その一方、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ氏がコロナウイルス対策記者会見で「米国内の感染拡大はこれから最悪期を迎える」と警告している。今や、株価の変動性の予想を示し「恐怖指数」と呼ばれているVIX指数が米国内の感染拡大状況を反映して跳ね上がり、株式市場の変動性を高めるメカニズムが構築されているように見受けられる。財政政策にも過度な期待をかけにくい面もあろう。
- NYダウの3/12の安値21,154ドルは2018/12/26の安値21,712ドルを下回った。下げ局面で直近の「大底」と考えられる価格を上回った水準を「二番底」として反転上昇を期待することが難しくなったように思われる。しかし、S&P500株価指数の3/12安値2,478ポイントは2018/12/26の安値2,346ポイントを5.6%上回り、ナスダック総合株価指数の3/12安値7,194ポイントは2018/12/24の安値6,190ポイントを16.2%上回っている。二番底からの戻りを試す局面へ移行する可能性はまだ残されているように思われる。その一方、3/13のS&P500における業種別株価(終値)では、エネルギー、金融、素材、資本財・サービスが2018/12/24終値を下回り、特にエネルギーが40%以上下回っていることは懸念されよう。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/13現在)
■主な企業決算の予定
●3月17日(火):フェデックス
●3月18日(水):ゼネラル・ミルズ
●3月19日(木):シンタス、アクセンチュア、ダーデン・レストランツ、レナー
■主要イベントの予定
●3月17日(火)
・米FOMC (18日まで)、米大統領選の予備選集中日(フロリダ、イリノイ州など)
・EU財務相理事会
・米小売売上高 (2月)、米鉱工業生産 (2月)、米企業在庫 (1月)、米NAHB住宅市場指数 (3月)、米求人件数 (1月)
●3月18日(水)
・米FOMC声明発表、議長記者会見と経済予測
・米住宅着工件数 (2月)
●3月19日(木)
・米経常収支 (4Q)、米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(3月)、米新規失業保険申請件数 (3月14日終了週)、米景気先行指標総合指数 (2月)
●3月20日(金)
・米中古住宅販売件数 (2月)
●3月23日(月)
・シカゴ連銀全米活動指数(2月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
本レポートの発行元:フィリップ証券株式会社〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町4番2号
TEL:03-3666-2101 URL: http://www.phillip.co.jp/
本レポートの作成者:フィリップ証券 リサーチ部
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 国際公認投資アナリスト 笹木和弘
当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提 供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の 見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身 の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害につ いても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じま す。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項> 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。