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日米首脳会談後もドル円は下値トライを警戒

Market Overview

注目された日米首脳会談だったが、筆者が懸念していたような円高イベントとはならなかった。しかし、安倍首相が記者会見の場で為替問題は財務相同士の議題と言及した際、トランプ大統領がすかさず通貨切り下げとそれに伴う貿易不均衡について指摘。円相場はドル円をはじめ過度の円高圧力こそ強まらなかったものの、株高に追随できない状況が示唆する通り、米大統領選挙後のような円売り圧力が強まる状況ともなっていない。また、米ドル高に対する露骨なけん制がなかったにも関わらず、米ドル相場全体の反発基調が弱い点も市場が米国の通商政策リスクを意識していることの証左と言える。

尚、10日の米国株式は大規模減税政策への期待や日米首脳会談の友好的ムードが好感され、主要3市場がそろって最高値を更新。株高を背景に米金利も反発基調を維持し、米ドル相場との相関性が高い10年債利回りは今月7日以来となる2.434%まで上昇する局面が見られた。

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Analyst's view

日米首脳会談が円高圧力を強めることはなかった。一見、リスクイベントを無難に消化したかに思われる。だが、トランプ大統領が為替と貿易不均衡に言及した際、ドル円が113円ミドル前後から112.85レベルまで下落した反応を振り返るならば、今後もトランプ大統領による為替と貿易不均衡への言及は円高圧力を強める効力があることが再確認された。
同時に、日米首脳会談ではもう一つ重要な点が確認された。それは、円相場がこれまでのように株高に追随できない事実だ。この日の米国株式は、主要3市場(ダウ平均 / S&P500 / ナスダック総合)がそろって最高値を更新した。米金利の反発とユーロ売りを背景に米ドル相場が反発基調にある中でも、グローバル株式市場と国際商品市況が崩れるムードも感じられない。しかし円相場は、これまでのように世界的なリスク選好トレンドに追随することができていない(チャート①を参照)。また、昨年の米大統領選挙後とは違い日米利回り格差が拡大一辺倒で展開するフェーズも終了し(チャート②を参照)、且つ米金利の振幅(=騰落率)は、堅調な米国株式市場とは対照的に米国債券市場のそれの方が大きい(チャート③を参照)。後者の点(=米金利の振幅拡大)は、トランプ政策への警戒感と欧州政治リスクが、株式市場以上に意識されていることを示唆している。大規模減税への期待から米国株式は今後も堅調に推移するだろう。株高は米金利の低下圧力を相殺するだろう。ただ、これから政治の季節に入る欧州の動向次第では、米金利の上昇圧力が阻害される局面が散見されよう。
また、米国の通商政策が自国経済第一政策であり且つ米ドル安政策である点も考えるならば(今後二国間FTA交渉では手始めに農産業分野で米国は日本にプレッシャーをかけてくるだろう)、今後のドル円は上下に振れながらも、まずはサポートポイント111.60レベルおよび節目の110.00をトライする展開が想定される。一方、クロス円ではユーロ円の動向に注目したい。10日は株高にもかかわらずポンド円同様陰線が示現し、日足一目基準線の突破に失敗。欧州政治リスクが高まれば、ポンド円とともにユーロ円が円高のけん引役となる可能性がある。テクニカル面で注視すべきは、昨年10月21日安値112.61を起点としたサポートラインの攻防となろう。このラインを下方ブレイクした場合は、日足雲の下限とリトレースメント50.00%(112.61-124.10)がクロスしている118.90レベルを視野に下落幅が拡大する可能性があろう。


【チャート①:世界株式(MSCI)とドル円の動向】

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【チャート②:日米金利差とドル円の動向】

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【チャート③:S&P500と米10年債利回りの騰落率】

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