Analyst's view
今年の外為市場は、政治に翻弄される年となっている。昨日はブラジルのテメル大統領が、国営石油公社の汚職事件を巡る捜査妨害と事件のキーマンとされる起訴中の前下院議長 エドゥアルド・クーニャ被告に隠蔽を画策した疑惑が浮上し、18日の通貨レアルは対ドル&円で急落した。
国際政治動向で最も注視すべき米国政治が混乱状態にある中、18日の米株は良好な米指標データが米株反発の一因となった。株高が米金利のサポート要因となり、ドル円は直近高値114.37レベルからの61.80%戻しでかろうじてサポートされ(日足ローソク足の実体ベース)、111円台の回復に成功している(チャート①参照)。重要テクニカルポイントでの反発は、再び上昇基調へ転じるシグナルとなる可能性がある。しかし、ドル円のボラティリティ(1か月)が、先月24日以来の水準まで急上昇している点を考えるならば、17日の急落が一過性の現象であったと判断するのは早計だろう(チャート②参照)。ドル円が日米10年債利回りスプレッドと連動している点を考えるならば、今後も米金利がトレンド決定要因となろう(チャート③参照)。その米金利は、トランプ政策への期待が後退している以上、引き続き指標データにセンシティブに反応する状況が継続しよう。
ただ、本日は米指標データの発表がない。各市場を変動させる重要イベントも予定されておらず、且つ週末というタイミングも考えるならば、本日の各市場はレンジ相場で推移する可能性がある。波乱要因はトランプリスクにかんする新たな報道だろう。米司法省は17日、昨年11月に行われた米大統領選挙にロシアが関与した疑惑を捜査するため、特別検察官の設置を決定。これに対しトランプ大統領は「魔女狩り」と批判したが、今後の捜査で疑惑がさらに深まれば、市場はトランプ政策頓挫のリスクを意識するだろう。そのような展開となれば、トランプリスクの再々燃により米金利には低下圧力が強まろう。米金利の低下は日米利回りスプレッドの縮小要因となり、結果ドル円の下落圧力を強めよう。110円再トライの可能性は未だくすぶり続けていると想定しておきたい。