Analyst's view
7月米雇用統計で非農業部門雇用者数は20.9万人、失業率は4.3%そして平均賃金は前月比で0.3%増、前年同月比で2.5%増と総じて市場予想以上の内容となった。米金利は素直に上昇で反応したものの、米ドル相場のトレンド決定要因となっている10年債利回りは2.30%手前でキャップされた(チャート①参照)。キャップされた理由は、賃金の内容にあると筆者は考えている。確かに7月平均賃金は市場予想と一致した。しかし、前年同月比では4か月連続の2.5%増で抑制された状況となっている。雇用増にもかかわらず賃金の上昇が抑制されている状況は、米個人消費の低迷の要因となろう。米国経済のエンジンである個人消費が低迷すれば、インフレ(期待)が持続的に上昇することもない。よって、現時点では米金利の低空飛行状態が継続する可能性が高い。
インフレ鈍化の懸念を払しょくする材料として注視すべきは、①トランプ政策と②米指標データである。しかし、現状①は頓挫する可能性すら高まっている。よって、目先は②をひとつひとつ確認していくことが重要となろう。今週は、生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)といったインフレ指標に市場の関心が集まろう。特に注視すべきは後者のCPIだろう。直近のコアCPIは前年同月比で1.7%増と低迷し、コアPCE同様、インフレ鈍化のトレンド化を示唆している。7月のコアCPI予想値は1.7%増と横ばい。今回の良好な雇用統計の内容を反映し市場予想を上回るならば、インフレ鈍化懸念が一時的に後退することで「米金利上昇→米ドル高」の展開となろう。逆にコアPCEに続き、コアCPIでもインフレ鈍化のトレンド化が確認されるならば、「米金利低下→米ドル安」トレンドの継続を想定したい。
米指標データ以外で米金利と米ドル相場のトレンドを左右する材料として注視すべきは、FEDスピーカーの言動となろう。本日はブラード・セントルイス連銀総裁とカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の講演が予定されている。
ドル円のチャートポイントだが、目先は111.00前後の攻防が注目される。111.10から111.30にかけては断続的にオファーが並んでいる。111円前半の攻防を制する場合、直近安値109.82レベルからの38.20%戻しと21日MAが密集している111.60台が次の上値ターゲットとなろう。一方、下値は3-4日にかけて相場をサポートした109.80の維持が焦点となろう。このレベルにはビッド、下の水準にはストップの観測あり(チャート②参照)。