Market Analysis
米CPIコアが上昇したにもかかわらず、12日海外時間の米ドルは対円&ユーロで往って来いの展開となった。この要因のひとつとして注目すべきは、ドイツの政治リスク後退を背景としたユーロ高である。メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と第二党ドイツ社会民主党(SPD)は12日、大連立政権樹立に向け正式な協議に入ることで合意した。実際の政権発足までには紆余曲折が予想されるが、12日の欧州債券市場では独10年債利回りが昨年8月1日以来となる0.543%まで上昇。その結果、米独利回り格差の拡大が抑制され、外為市場ではユーロドルが1.22レベルを視野に上昇。これらの市場動向はドイツの政治リスクが主要テーマから外れ、市場の焦点が域内のファンダメンタルズへ回帰する可能性があること示唆している。1.21レベルがレジスタンスからサポートへ転換すれば、短期的にさらなる上値トライを想定したい。ユーロ円も堅調相場を想定。上値の攻防分岐は1月5日高値136.62となろう。
今週、米ドル安圧力を強める要因として注視すべきもうひとつの要因は、17日のカナダ中銀(BoC)イベントだろう。直近のCPI(2017年11月)は前年同月比で1.4%増から2.1%増、コア指数は0.9%増から1.3%増と、それぞれ昨年10月から上昇。また、2017年12月の雇用関連指標も堅調な内容だったことを考えるならば、BoCが追加利上げに積極的なスタンスを示す可能性がある。世界経済の持続的な改善をベースに原油先物相場が上昇基調にあるタイミングでBoCのタカ派スタンスが明らかになれば、米ドルはカナダドルでも下落する展開が想定される。米ドル安が継続する場合、国際商品市況の押し上げ要因となる。よって他の資源国通貨、特に原油先物相場との相関性が高いロシアルーブル、メキシコペソそしてブラジルレアルといった通貨が対ドルで堅調に推移する可能性があろう。尚、今週のドルカナダの下値攻防分岐は1月5日安値1.2350レベルを想定。
ユーロ高とBoCイベントはドル円の上値を抑制する要因となり得るが、ドル円特有の下落要因として注視すべきは、国内の金利動向だろう。12日の米CPI後の米ドル高を抑制したもうひとつの要因は、日米利回り格差の縮小だった(チャート①参照)。オペ減額以降、日銀によるテーパリングが意識され国内金利に上昇圧力が強まり易い環境となっている。これに対する思惑、そして日銀地域経済報告(15日)や2017年11月機械受注(17日)の内容次第で国内金利の上昇基調が続く可能性がある。それにより日米利回り格差が縮小傾向を辿れば、ドル円は下値トライの展開となろう。この場合、株高によりサポートポイントが決定されよう。テクニカル面では、リトレースメント61.80%にあたる110.15レベルの攻防となるか注視したい(チャート③参照)。