Analyst's view
米ドル相場との相関性が高まっている10年債利回りは7日連続で上昇し、9日に昨年の米大統領選挙後に到達した水準まで反発した(2.60%台)。米ドル相場のトレンド決定要因である米金利の急反発は米ドル高圧力を強め、ドル円は本日早朝に節目の115.00を突破している。筆者は来週のFOMCまで111.60-115.00をコアレンジと想定し、このレンジの上限を上方ブレイクしても115.60レベル(1/19高値水準)で上値がレジストされると想定している。この想定を覆す要因として注視すべきは、2月米雇用統計だろう。最大の注目点が賃金動向にあることは指摘済み。市場予想以上ならば「消費拡大→経済成長の加速→イエレンFRBの段階的な利上げ」という連想が強まり、米金利はさらに上昇しよう。それに伴いドル円も115.60レベルを突破する可能性が高まろう。
ただ、115.60レベルの突破に成功しても、上昇トレンドを形成する可能性は低いと想定している。その理由は2つある。ひとつは、2月下旬より始まった米金利の上昇スピードに米ドル相場(=ドルインデックス)が追随出来ていないことだ(チャート①参照)。確かに1月上旬以来となる102.20台まで反発はしているが、米大統領選挙後のような上昇スピードは見られない。この点は、米通商政策リスクが意識されているためだろう。
米通商政策リスクに加え、目先注視すべきは他市場の動向、特に米株と国際商品市況の動向となろう。未だ史上最高値圏を維持してはいるものの、直近の米株は米金利の上昇に追随できず、年初来パフォーマンスはついに逆転(チャート①参照)。また、原油先物価格をはじめとした国際商品市況(CRB指数)が大きく崩れてきている点も考えるならば(チャート②参照)、米ドル高リスクが台頭しつつあるシグナルと捉えることができる。米通商政策リスクに加え、米雇用統計発表後に株式市場と国際商品市況までが同時に崩れる展開となれば、米ドル高圧力の相殺要因となろう。結果、ドル円の上昇圧力も相殺され、もとのレンジ相場へ回帰して来週の米国イベントを迎えることになろう。