Market Analysis
2月の米雇用統計を長期金利の急上昇阻止と株高回帰ムードを高めるという2つの観点で考えるならば、投資家のリスクセンチメント改善には理想的な内容だった。米長期金利の上昇が抑制されている限り、米株が不安定化する可能性は低い。事実、2.90%前後で長期金利が横ばい推移へ転じて以降、米株のボラティリティも低下基調を維持している(チャート①)。①米政治リスクを背景に米ドル買い圧力が高まり難いタイミングで、②株高回帰のムードが高まり、③原油相場が60ドル台を堅持している現在の相場環境を考えるならば、外為市場では円が売られやすい通貨となろう。特に資源国および資源セクターと関連性の高い新興国の通貨に対して円の下落幅が拡大する展開を想定したい。一方、ドル円は①が上値を抑制するだろう。だが、②と③を意識した円安が①の相殺要因となろう。「円安 vs 米ドル安」という相場環境は、ドル円のボラティリティ拡大の可能性を低下させる状況と言える。この状況が続く限り、米ドル安や株安を背景に過度に下落することも、リスク選好により過度に上昇することもなく、ドル円は105.00-108.00をコアレンジとした相場を想定したい(チャート②)。リスク選好相場に加え、短期リスクリバーサル(1週間 /1か月)も下落圧力の後退を示唆している状況を考えるならば、今週のドル円はレンジの上限108円トライを意識したい。
上述した相場環境を崩す要因として目先注視すべきは、やはり米長期金利の急上昇だろう。金利の変動要因として、今週は13日の2月米消費者物価指数(CPI)に市場の関心が集まろう。コア指数の市場予想は前年同月比で1.8%と、1月から横ばいの見通しとなっている。市場予想を超える内容となれば、米債市場ではFEDの利上げペース加速が意識され、金利が急上昇する可能性がある。この場合、米株は一時的に再び不安定化しよう。米株の不安定化は世界の株式の不安定化を誘発し、円高圧力を強めよう。ドル円は米ドル高よりも株安(円高)の方に敏感に反応し、再び105円台を目指す展開となろう。だが、米株市場では金利の上昇そのものに対する耐性が強まっており、且つ米ファンダメンタルズも堅調さを維持している。米金利の上昇によるリスク回避相場となっても短期で終息する展開を想定したい。
週前半のユーロドルのトレンドも米CPIの内容に左右されよう。「米インフレ上昇→米ドル買い」の場合は、重要サポートポイント1.2170レベルを視野に下落幅が拡大しよう(チャート③)。だが、米政治リスクがくすぶる中での米ドル買いは短期で終息しよう。一方、CPIが市場予想以下となる場合、FOMC前までユーロ高優勢の展開を想定したい。焦点は先週2度上値をレジストし、オファーが観測されている1.2450の攻防となろう。1.2400にもオファーの観測あり。
【チャート①:米長期金利 / 米株ボラティリティ】