米国株の割高感は解消されたのか?
米国ウィークリー 2020年3月24日号
- 米国における新型コロナウイルスの感染拡大ペースが加速化した。3/22の感染者数は前日比12,933人(66%)増の32,481人、感染に係る死者数は前日比139人(54%)増の398人となった。それに加え、3/22現在、ニューヨーク州およびカリフォルニア州を含む8州が住民に外出禁止令を出した。これを受けて週明け3/23(日本時間)のダウ工業株30種平均(NYダウ)先物価格はNYダウの3/20終値に対して約1,000ドル安い水準(日本時間13時時点)で推移した。3/16終値で81.6まで上昇したVIX指数は3/20終値で66.04まで低下したものの依然として高水準である。オハイオ州では、外出禁止令によって感染拡大のペースを鈍らせ、既存の医療体制で感染者の治療を行う時間を確保することを目的としている。新型コロナウイルスの潜伏期間は約2週間と言われており、現在とられた厳しい措置の効果が出るまでにはタイムラグが発生すると考えられよう。
- 米国の代表的な株価指数であるS&P500の3/20終値(2,304ポイント)を基準とした場合、Bloombergによれば2020年度の予想1株当たり利益(EPS)が139.38USD、直近実績の1株当たり純資産(BPS)が907.73USD、予想1株当たり配当金が62.96USDであることから、予想株価収益率(PER)は16.5倍、実績ベースの株価純資産倍率(PBR)は2.54倍、予想配当年利回りは2.73%となる。特にPBRから見た場合の割高さが目立つ。これは、米国企業がROE(株主資本利益率)を高めることや株主還元を強化することを経営目標とするなか、資産効率を高めるために自社株買いを積極化していたことが理由として挙げられる。また、米国上場企業の時価総額合計を米国の名目国内総生産(GDP)で割った値である「バフェット指数」は2020/2に過去最高である158%を付けた後、3/20には106%まで低下した。一般的には、100%を上回れば割高、100%を下回れば割安と言われており、中立的な水準に近づいていると言える余地があろう。
- 株式市場が変動性を高めて下落基調となるなか、ギリアド・サイエンシズ(GILD)のように新型コロナウイルス治療薬の有望候補を擁する企業、Zoom Video Communications (ZM)のように在宅勤務の拡大に伴うビデオ会議利用の恩恵が期待できる企業、コストコホールセール(COST)やクローガー(KR)のように食料品の買いだめに関連しそうな企業、テラドック・ヘルス(TDOC)のようにオンラインの遠隔診療を手掛ける企業などの銘柄に物色が集まる傾向が見られる。当面は、人と人との接触を避けつつも日常生活に係る必需品や必要不可欠なサービスを手がける銘柄・業種に注目が集まりやすいと考えられよう。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/20現在)
■主な企業決算の予定
●3月24日(火): ナイキ、IHSマークイット
●3月25日(水):マイクロン・テクノロジー、ペイチェックス
■主要イベントの予定
●3月24日(火)
・米新築住宅販売件数(2月)
●3月25日(水)
・米耐久財受注 (2月)、米FHFA住宅価格指数 (1月)
●3月26日(木)
・米新規失業保険申請件数 (21日終了週)、米GDP (4Q)、米卸売在庫 (2月)
●3月27日(金)
・米個人所得・支出 (2月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (3月)
●3月30日(月)
・米中古住宅販売仮契約(2月)、ダラス連銀製造業活動指数(3月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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