イリノイ・ツール・ワークス(ITW)、利益率・競争力の高い事業を選別し、既存事業の営業利益率を高めて連続増配と自社株買いで株主還元
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- 2019/12期2Q(4-6月)は売上高が前年同期比5.8%減、純利益が同6.5%減だったが、一時的要因を除く調整後EPSは同1.5%増だった。
- 構造改革費用の一時要因を除く営業利益率は「エンタープライズ・イニシアチブ」の貢献もあり同0.1%pt上昇した。
- 利益率・競争力の高い事業を継続的に選別する事業ポートフォリオ管理の経営方針がフリーキャッシュフローの増加をもたらし、増配や自社株買いなどの積極的な株主還元に繋がっていると言えよう。
What is the news?
7/26発表の2019/12期2Q(4-6月)は売上高が前年同期比5.8%減の36.09億USD、純利益が同6.5%減の6.23億USDの減収減益だった。ただし、為替相場変動や事業売却の影響を除くオーガニック売上高は同2.8%減(内、0.7%ptは会社計画に沿って「製品ライン簡素化」を実施したことによる影響である)にとどまり、為替相場変動、構造改革費用、および事業売却に伴う一時的要因の影響を除いた調整後EPSで見れば同1.5%増の2.00USDと増益だった。
構造改革費用の一時的要因を除いたベースの営業利益率は「エンタープライズ・イニシアチブ」(最も利益率の高い顧客および製品ラインにフォーカスする政策)が同1.1%pt寄与したこともあり、同0.1%pt上昇の24.4%となった。同ベースの営業利益率をセグメント別に見ると、自動車OEM事業が同0.3%pt低下の22.2%、食品機器事業が同0.4%pt上昇の25.8%、テスト・測定および電機事業が同0.5%pt上昇の24.0%、溶接事業が同0.1%pt低下の29.2%、ポリマーおよび液体事業が同2.0%pt上昇の23.2%、建設製品事業が同0.4%pt上昇の24.9%、特殊製品事業が同1.5%pt低下の26.6%と全事業が高水準を維持した。また、フリーキャッシュフローが同14%増となり、3.75億USDの自社株買いを実施した。
How do we view this?
2019/12通期会社計画は、EPSが7.55-7.85USD(前期:7.60USD)、営業利益率が前期比0-0.5%pt上昇の24.3-24.8%、自社株買いが15億USDである。EPSは上記の一時的要因に係る損失を約0.25USDほど追加したために4/25発表時の7.90-8.20USDから下方修正したが、エンタープライズ・イニシアチブ政策の営業利益率への寄与を2Q実績(1.1%pt)よりも低い1.0%ptと見込んでおり、同政策の進展が会社計画進捗の鍵を握ろう。また、同社は8/2に配当金の前期比7%増を発表した。利益率・競争力の高い事業を継続的に選別する事業ポートフォリオ管理の経営方針がフリーキャッシュフローの持続的増加をもたらし、積極的な株主還元に繋がっていると言えるだろう。2019/12通期の市場予想は、売上高が前期比3.4%減の142.61億USD、当期利益が同2.9%減の24.89億USDである。
終値(USD) 153.71 2019/9/9
会社概要
1912年に設立され、イリノイ州グレンビューに拠点を置く。世界中で幅広く工業製品・機器を製造・販売する多国籍製造業コングロマリットである。 「自動車OEM」、「食品機器」、「テスト・測定および電機」、「溶接」、「ポリマーおよび液体」、「建設製品」、および「特殊製品」の7つの事業セグメントから構成される。
製品を製造会社に直接販売するほか、独立したディストリビューターを通じても販売している。利益率・競争力が低下した事業の売却、最も利益率の高い顧客および製品ラインにフォーカスする政策(エンタープライズ・イニシアチブ)を伴う既存事業への投資、および付加価値やシナジー効果が見込める事業の買収を並行して行うことで利益率・競争力の高い事業を選別し、多様化した事業ポートフォリオ全体の利益率を高める独自のビジネスモデルを構築している。2018/12期まで連続47期増配である。
企業データ(2019/9/10)
ベータ値 1.05
時価総額(百万USD) 49,722
企業価値=EV(百万USD) 56,042
3ヵ月平均売買代金(百万USD) 187.3
1.STATE FARM MUTUAL AUTO INSURANCE 12.67
2.VANGUARD GROUP 8.07
3.BRIAR HALL MANAGEMENT LLC 7.99
(出所:Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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