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イラン情勢と今後の焦点

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 2020年最初のマーケットレポートは中東情勢にフォーカスしました。今後注視すべきことは何か?外為市場の動向は?詳細はレポートをご覧ください。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

イラン情勢と3つの焦点

2020年も米国政治と経済の動向が外為市場のトレンドを左右する― 2019年最後のレポートで筆者はこのように指摘した。1月3日、トランプ米政権がイラン革命防衛隊のコッズ部隊を率いるガセム・ソレイマニ司令官を殺害したことで、新年早々から米国の動向から目が離せなくなった。
今後のイラン情勢を考える上で最も重要な焦点となるのが、イランサイドの動向である。同国の外交・国防を統括する最高安全保障委員会は「反撃方法の決定に達した」との声明を発表。ロウハニ大統領も「間違いなく報復する」と述べており、イランサイドは何等かの報復措置を取るだろう。問題はその方法だが、米国との軍事力に差がある以上、イランサイドはゲリラ戦で対抗する可能性が高い。また、下記で指摘しているように中国のスタンスも重要な焦点である。
イラン情勢の展開を受け各市場も敏感に反応しよう。米イランの報復合戦の可能性が高まっている現状を考えるならば、注視すべきは①原油価格、②米長期金利、そして③円相場とリスク性の高い通貨の動向である。①については、「中東の地政学リスク → 供給懸念」を背景に原油価格は上昇基調もしくは高値圏での攻防を維持するだろう。より注視すべきは②と③の動向である。

NY原油価格/米長期金利

WTI  NY原油先物  the US treasury yield  米10年債利回り

米長期金利と中国リスク再燃の可能性

2016年Q3から約2年間、米長期金利(以下米金利)は上昇トレンドにあった。その土台となったのはNY原油先物価格(以下WTI)の上昇だった。しかし、2018年10月にFEDリスク(=米利上げリスク)が意識されて以降、「原油高 / 米金利上昇」の関係は崩れている。イラン情勢の緊迫化を受け、3日のWTIは3%以上上昇し、一時、昨年4月以来となる64ドル台を付ける局面が見られた。一方、米金利は1.78%台へ低下した。昨年10月以降、FEDが米ドルの資金供給を開始する状況の中、WTIの上昇に追随できない米金利の状況も考えるならば、イラン情勢で最も買われやすい通貨は米ドルではなく日本円となろう。事実、3日の円相場は全面高(円高)となり、週明け早朝のドル円は108円台を下方ブレイクしてスタートしている。
興味深いのは、リスク性の高い新興国通貨だけでなく、オセアニア通貨に対しても売り圧力が高まったことである。米中対立リスクが後退している状況でこれら通貨が売られた事実は、単にリスク回避という理由だけでなく、イラン情勢の緊迫化が米中対立リスクの再燃につながることを市場参加者が意識している可能性がある。イランのザリフ外相は4日、中国の王毅外相電話会談を行い、両外相は米国の軍事行動の牽制で一致した。また、中国はトランプ米政権が昨年5月にイラン産原油の全面禁輸を発動して以降、非公式ルートでイランから原油を輸入し同国経済を側面支援しているとの疑惑が浮上している。中国のイラン情勢に対するスタンス次第で米中が再び対立する可能性がある以上、オセアニア通貨や新興国通貨は対日本円で下値トライの局面が散見されると予想する。対米ドルでも軟調地合いが予想される。

円相場のパフォーマンス

円相場 騰落率

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