トランプ大統領とパウエル議長は最強タッグか?
米国ウィークリー6月11日号
- 米国株式市場は、メキシコからの全輸入品に追加関税を課す旨のトランプ大統領発言によって投資家心理が冷え込み、6/3にNYダウで24,680ドルまで下落した。その後、6/4のパウエルFRB議長発言を契機に利下げ期待が高まり、6/7発表の雇用統計がその期待を一層強める展開となった。更に、同日午後にメキシコへの関税凍結期待が高まり、高値26,000ドル超えまで上昇。その後でトランプ大統領からメキシコへの関税無期限凍結が発表された。パウエル議長とトランプ大統領のタッグが市場の悲観論を一挙に退治したかのように見える。
- まず、雇用統計については、非農業部門の就業者数が前月比7.5万人増(市場予想18万人増)にとどまって増加幅が前月の22.4万人増から急減した。また、平均時給の前年同月比の伸び率も3.1%となり、前月の3.2%から縮小した。パウエルFRB議長は6/4にシカゴでの講演で「景気拡大を維持するために適切な行動を取る」と発言し、景気拡大の指標として「強い雇用と2%の物価上昇目標」を挙げていたことから、特に賃金上昇率が鈍化していることが物価上昇率の鈍化に繋がりやすいと見て市場は利下げ期待を強めた。金利先物相場を基に計算する「フェドウオッチ」では、7月の利下げ確率が84%まで上昇した。
- 次に、トランプ大統領は、来年の大統領選再選に向けた大規模集会を6/18に「スイング・ステート」とされるフロリダで開く予定であり、不法移民対策に関してメキシコから合意を取り付けた成果をアピールできることとなった。次回のFOMCが6/18-19に開催されることから、NYダウの史上最高値更新に向けて短期的な山場を迎える可能性もあろう。その一方で、更なる相場上昇には、6/28-29のG20大阪サミットに向けて米中首脳会談への期待が出てくるかどうかが必要だろう。
- 個別銘柄に関しては、直近の新規上場(IPO)銘柄に動きが出てきたのが注目される。3/29上場のリフト(LYFT)および5/10上場のウーバー(UBER)は6/7終値が公開価格を下回っている。他方、4/18上場のピンタレスト(PINS)、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)、および5/2上場のビヨンドミート(BYND)は6/7終値が公開価格を上回った。特に、ビヨンドミートが公開価格の2.6倍、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが同5.5倍と際立った上昇率を示しており、明暗を分けている。IPO銘柄に関しては、新規上場後の最初の決算発表後に証券会社がリサーチのカバレッジを開始することが可能となることから、公開価格を上回ったかどうかだけでなく、決算発表後の株価動向に要注目だろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(6/7現在)
■主な企業決算 の予定
●6月11日(火):H&Rブロック
●6月13日(木):ブロードコム
■主要イベントの予定
●6月11日(火)
・ゲーム見本市「E3」(ロサンゼ ルス、13日まで)
・PPI(5月)
●6月12日(水)
・ドラギECB総裁が講演 (フランクフルト)
・CPI (5月)、財政収支 (5月)
・中国CPI・PPI (5月)
●6月13日(木)
・ユーロ圏財務相会合 (ユーログループ、ルクセンブルク)
・ユーロ圏鉱工業生産 (4月)、独CPI (5 月)
・英保守党党首選、下院議員による 第1回投票
・輸入物価指数(5月)、新規失業保険申請件数 (8日終了週)
●6月14日(金)
・国際エネルギー機関(IEA)月報
・EU財務相理事会(ルクセンブルク)
・小売売上高 (5月)、鉱工業生産 (5月)、ミシガン大学消 費者マインド指数(6月)、企業在庫(4月)
・中国固定資産投資・工業生産・小売売上高 (5月)
●6月15日(土)
・G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合(長野県軽井沢町、16日まで)
・米の対中関税引き上げ延期期限
●6月17日(月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数
・NAHB住宅市場指数
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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