「トランプ再選相場」のスタート時期を探る展開へ
米国ウィークリー 2019/6/4号
- 対中追加制裁関税に続き、5/30にトランプ政権がメキシコからの全輸入品に追加関税を課すと発表し、世界の株式市場に動揺を与えた。5/28-31週では、NYダウで5/28に高値25,717ドルを付けたが、メキシコ関税発表後の5/31には安値24,809ドルを付けた。5/31には米国10年国債利回りが2.12%まで低下した。トランプ大統領は6/18に来年の大統領選再選に向けた大規模集会を開く予定であることを発表。メキシコ国境を通る不法移民対策を看板政策とするトランプ政権にとって、この時期に何らかの手を打つ必要に迫られていたと推察される。
- 5/5に対中関税2,000億ドル分への関税引上げを発表する前のNYダウが26,504ドル(5/3終値)であり、5/31終値24,815ドルまで1,689ドルの下げとなったが、この間、株価重視のはずのトランプ大統領からツイッターなどで株価の下げに対するコメントは発せられていない。確かに、2018/12の安値21,712ドルから見れば未だ十分に株価は値上がりした位置にあり、選挙戦略優先で強気の政策に打って出て株価が下落したとしても、まだ余裕があるという面もあろう。
- また、長短金利の逆イールドに対しては景気後退の予兆として市場の警戒が強まっている。債券利回りの急低下は、6/18-19に開催予定のFOMCに向けて利下げ催促の意味もあるだろう。しかし、世界23ヵ国の国債を対象にしたJPモルガンの調査によれば、5/23の「マイナス利回り国債」発行残高がこの半年間で倍増し、2年物国債に至っては12ヵ国がマイナス利回りである。それに対して米国債が2%台の年利回りであることが、投資対象として大きな魅力をもたらしている面もあり、過度に景気後退の予兆という見方に傾斜すべきではないだろう。その一方で、6月以降は関税引上げのコストが物価に反映する可能性もあり、物価上昇懸念による債券利回り反転上昇の芽が生まれつつあることにも要注意だ。
- その他、トランプ大統領は5/31にイギリスの「合意なきEU離脱」を支持するコメントを発している。6/3にトランプ大統領の訪英予定があり、米中冷戦本格化に向けて「ブレグジット」後を睨んだ米英の同盟関係強化目的も察せられる。
- 株式市場は現在の調整局面の後、来年の大統領選に向けた「トランプ再選相場」のスタート時期を探る展開が想定される。金利低下は企業の資金調達におけるコスト低下の恩恵をもたらし得る。特に資金需要が旺盛な成長企業にはプラスだろう。高成長を継続しながらも、市場予想の業績への期待値が高いために決算発表後に売られる銘柄は、"Buy The Dip"のチャンスだろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/31現在)
■主な企業決算 の予定
- 6月4日(火):ティファニー、セールスフォース・ドットコム
- 6月5日(水):キャンベルスープ、ブラウン・フォーマン
- 6月6日(木):JMスマッカー
主要イベントの予定
6月4日(火)
- パウエFRB議長FRBの会議で歓迎のあいさつ、ニューヨーク連銀総裁講演
- 中国天安門事件から30年
- 製造業受注 (4月)、耐久財受注 (4月)
6月5日(水)
- クラリダFRB副議長FRBの会議で歓迎のあいさつ、アトランタ連銀総裁講演
- 地区連銀経済報告(ベージュブック)
- ADP雇用統計(5月)、ISM非製造業指数 (5月)
- 中国国家主席、訪ロ(7日 まで)
- 中国財新サービス業PMI (5月)、コンポジット PMI (5月)
- ユーロ圏総合PMI (5月)、同サービス業PMI (5月)、
6月6日(木)
- ダラス連銀総裁、ニューヨーク連銀総裁講演
- ECBが政策金利発表、ドラギ総裁記者会見
- トランプ大統領、訪仏
- 貿易収支 (4月)、労働生産性 (1Q)、新規失業保険申請件数 (6月1日終了週)
- ユーロ圏GDP (1Q)
6月7日(金)
- メイ英首相、与党・保守党の党首を辞任
- サンフランシスコ連銀総裁、講演(シンガポール)
- 中国・香港市場は休場
- 雇用統計 (5月)
- 卸売在庫 (4月)、消費者信用残高 (4月)
- 中国外貨準備高 (5月)
6月8日(土)
- 20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(9日まで、 福岡)
- G20貿易・デジタル経済相会合(9日まで、茨城県つくば市)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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