膠着相場の終わりは「ドラギ・ナイト」
米国ウィークリー 2019/3/12号
- 米中協議への期待と景気減速への不安の綱引きによる膠着状況に終わりを告げたのは、ECBのドラギ総裁だったのか?ECBは3/7に、2019年ユーロ圏経済成長見通しを1.1%と昨年12月時点予想から0.6ポイント引下げ、市中銀行向け長期資金供給プログラムや政策金利据置きの期間延長を打ち出した。NYダウやS&P500の200日移動平均線が意識され、S&P500が同線を下回ったところで売りが加速。中国も、3/8発表の2月貿易統計では輸出(ドル建て)が前年同月比20.7%減と3年ぶりの減少率となった。同日発表の米国2月雇用統計でも非農業部門雇用者数が前月比2万人増(前月31.1万人増)に留まり、欧州・中国・米国のリレーで世界景気減速懸念に拍車をかけるかに思われたが、一時的要因が大きいと見なされ、失業率が3.8%と前月の4.0%から低下して半世紀ぶりの低水準、平均時給は前年同月比3.4%増という約10年ぶりの高水準となり、個人消費の下支え材料と見られたことが株式相場の下支え要因となった。
- 現在の米国は、グローバル経済減速懸念に揺らぐ「外需」に対して、「内需」は、原油生産量が全米38%、天然ガスが同23%(2017年、EIA調べ)を占めるテキサス州が米国経済を牽引している。米国のシェールオイルの生産は10年で2倍強に拡大、2018年にはロシアやサウジアラビアを抜いて原油生産量が世界最大となった。3/2のWall Street Journalでも「米シェールブーム、理容師も年収18万ドル」と紹介されているほどだ。また、トランプ政権の鉄鋼関税の恩恵もあり、Nucor(NUE)やUnited States Steel(X)などの鉄鋼メーカーの業績が息を吹き返している。今後出てくる経済指標も、不安な外需と好調な内需に翻弄され、投資家心理を執拗に上下に揺さぶり続ける展開が予想される。
- 一方、外需不安の震源地である中国経済は、3/7に中国河北省が大気汚染対策として年間の鉄鋼生産能力を削減する方針を示すなど、構造改革に意欲を示している。更に、中国が今年より導入した「NEV規制」により、自動車メーカーは中国での生産・輸入量に応じて一定比率の電気自動車を製造販売することを義務付けられた。このような構造改革も、ガソリン消費などのエネルギー需要減に繋がり、景気指標の落ち込み要因になっている面もあるように思える。
- 米国株でも5G関連は重要テーマであり、5G普及の鍵となる基地局のインフラシェアリングや5G用半導体では日本株以上に直接的な恩恵を被る可能性がある企業も見られる。また、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)関連でリカーリング(継続課金)収入の比率を高めている企業の株価パフォーマンスが昨年10-12月の相場暴落局面でも相対的に良かったこと想起すべきだろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/8現在)
■主な企業決算 の予定
●3 月14 日(木):ダラー・ゼネラル、アルタ・ビューティ、ブロードコム、オラクル、アドビ
■主要イベントの予定
●3 月12 日(火)
・英議会、12 日までに政府の離脱修正案を採決
・EU 財務相理事会
・USTR 代表、上院財政委員会のWTO に関する公聴会で証言
・CPI (2 月)
●3 月13 日(水)
・英議会、修正案否決の場合は「合意なき離脱」の是非を採決
・PPI (2 月)
・耐久財受注 (1 月)
・建設支出 (1 月)
・ユーロ圏鉱工業生産 (1 月)
●3 月14 日(木)
・英議会、修正案否決で「合意なき離脱」拒否の場合は、離脱延期を巡る審議・採決
・輸入物価指数 (2 月)
・新規失業保険申請件数 (9 日終了週)
・新築住宅販売件数 (1 月)
・独CPI (2 月、改定値)
・中国小売売上高・工業生産・固定資産投資 (2 月)
●3 月15 日( 金)
・中国全人代が閉幕、李克強首相が記者会見
・国際エネルギー機関(IEA)月報
・鉱工業生産 (2 月)
・求人件数 (1 月)
・ミシガン大学消費者マインド指数 (3 月、速報値)
・対米証券投資 (1 月)
・欧州新車販売台数 (2 月)
・ユーロ圏CPI (2 月、改定値)
・中国新築住宅価格 (2 月)
●3 月16 日(土)
・スロバキア大統領選挙(第1 回投票)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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