坂道を漕ぎ上がる自転車の如き株式相場か?
米国ウィークリー 2019/3/5号
- 「坂道を自転車で駆け上がり、険しくなる斜面でより強く"期待"のペダルを漕ぐ」が如き相場展開なのだろうか。NYダウは2/25に26,241ドルまで上伸後、26,000ドルを挟んだ揉み合いの動き。米中協議で3/1期限の関税引上げ延期の好材料による期待出尽くし感、2016/11以来の低さの2月ISM製造業景況指数(54.2)他の景気指標やアトランタ連銀の1Q実質GDP成長率見通し(0.3%増)、議会での「ヘルスケア改革」議論を受けてのヘルスケア銘柄への逆風等のネガティブ要因の強まりに対して、パウエルFRB議長の上下院での議会発言で利上げ見送りやバランスシート縮小見通しが相場を下支えした構図となった。3/8発表予定の2月雇用統計で先行きの景気見通しをどれだけ改善できるかが、坂道の斜面の険しさを決める上でも重要となろう。
- 中国も1月末「社会融資規模」が前年同月比10.4%増の205兆元に達するなど、年初以降、金融が実体経済を支える傾向が強まり、2月製造業購買担当者景気指数(PMI)は3か月連続50割れながら前月48.3から49.9に回復した。中国発の過剰流動性相場の持続性も、米国株相場を支えるかどうかの大きな要因となるであろう。
- 米株指数については、日本株のメジャーSQ(特別清算指数・MSQ)算出の翌週3/15にMSQを控えている。日経平均についてファーストリテイリングの寄与度の高さが問題視されることがあるが、NYダウについても値嵩株であるボーイング(BA)の動向が波乱要因。財政赤字増大の中でトランプ政権が「米国ファースト」を打ち出し、同盟国に防衛費負担の増大を強く要請する流れや「空飛ぶクルマ」のイノベーションなど中期的な株価への期待は変わらないものの、短期的には、米朝会談時の航空機大口受注からの買い先行・過熱感から利益確定売りには注意が必要。日本株同様、NYダウもMSQ週に株価指数寄与度の高い値嵩株動向によるブレに要注意だろう。
- 2/14にウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイによる大手銀行株買い増しが明らかになったが、トランプ政権の看板政策でもある金融規制緩和を受けた金融業界のM&Aの動きに要注目。中小・地域金融機関の負担軽減と地域経済活性化を目的として、既にFRBは厳しい健全性基準が課される「大規模銀行」の総資産規模を2020年以降は2,500億ドル以上に引き上げることとしているが、これに加え、低金利による米地銀の収益低下・過当競争やFRBの利上げペース鈍化もあり、米銀の収益環境が楽観視できないことから、2/7の大手地銀BB&T(BBT)のサントラスト(STI)買収発表に続く動きが出てくることが予想される。景気浮揚が必要なトランプ政権からすれば、更に大規模銀行の規制緩和圧力も強まる可能性があり得るだろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/1現在)
■主な企業決算 の予定
●3月5日(火):ターゲット、コールズ、ロス・ストアーズ、クーパー
●3月6日(水):ダラー・ツリー、ブラウン・フォーマン
●3月7日(木): H&Rブロック、クローガー、コストコホールセール
■主要イベントの予定
●3月5日(火)
・中国、全国人民代表大会(全人代)開幕
・英中銀総裁、上院で証言
・リッチモンド連銀総裁、講演
・ジュネーブ国際自動車ショーのプレスデー(6日まで、一般公開は7-17日まで)
・豪中銀、マレーシア中銀、政策金利発表
・新築住宅販売件数 (12月)、ISM非製造業景況指数 (2月)、財政収支 (1月)
・ユーロ圏 総合PMI (2月、改定値)、ユーロ圏 サービス業PMI (2月、改定値)、ユーロ圏 小売売上高 (1月)
・中国 財新サービス業PMI (2月)、中国財新コンポジットPMI (2月)
・韓国 GDP (10-12月、改定値)、 南ア GDP (10-12月)
●3月6日(水)
・クリーブランド連銀総裁、討論会に参加
・ニューヨーク連銀総裁、講演
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
・OECD経済見通し
・トルコ中銀、カナダ中銀、政策金利発表
・ADP雇用統計 (2月)、貿易収支 (12月)
・豪 GDP (10-12月)
●3月7日(木)
・ECB、政策金利発表・記者会見
・新規失業保険申請件数 (3月2日終了週)、家計純資産 (10‐12月)、消費者信用残高(1月)
・ユーロ圏 GDP (10-12月、確定値)
・中国 外貨準備高 (2月)
●3月8日( 金)
・雇用統計 (2月)、住宅着工件数(1月)
・独製造業受注 (1月)、中国貿易収支 (2月)
●3月9日(土)
・中国CPI (2月)、中国PPI(2月)
●3月10日(日)
・夏時間開始
・中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ (2月、15日までに発表)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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