「米中ウォーズ」を制するフォースを感じろ?
米国ウィークリー 2019/5/28号
- トランプ政権による追加制裁関税「第4弾」(約3,000億ドル分の中国製品に最大25%の関税)、ファーウェイに対する禁輸措置、および監視カメラのハイクビジョンなどへの禁輸措置検討などに対して、市場では中国がレアアース(希土類)の禁輸による報復に出るのではないかという観測が流れた。レアアースは、スマートフォン、自動車、風力発電タービン、戦闘機、原油精製設備など広範囲な製品に影響が及んでいる。米国が輸入しているレアアースの80%が中国からの輸入であり、世界の市場供給の約90%をコントロールするなど、グローバル経済におけるサプライチェーンの重要な根幹を中国が握っている。
- 米国株式市場も、ファーウェイ制裁に対して英半導体設計のアームが制裁に同調することが報じられると、波紋が一気に拡がった。半導体関連・ハイテク関連株が幅広く売られ、5/20-24の週足でNYダウが5/21高値25,898ドルを付けた後、5/23に25,328ドルの安値を付けた。特に5/23には、米中の相互報復関税への懸念が高まっただけでなく、5月のユーロ圏・ドイツ・米国の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が低迷したこともあり、原油先物が1日で5%以上売られ、米国10年国債利回りも0.1%(10bps)近く低下して2.3%割れとなるなど、グローバル経済に対する先行き弱気の見方が一気に顕在化した日となった。
- 中国は過去にも2010年に日本へのレアアース禁輸措置を取ったことがある。レアアースから磁石などの磁性材料を製造する幾つかの日本企業は、中国に生産拠点を移管しつつも、中国事業のリスクに対応できるように「チャイナ・プラスワン」の観点から、東南アジアに加えて日本の工場も閉鎖せずに生産体制を整えている。レアアース資源自体は、カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山やオーストラリアでも採掘可能であり、仮に中国がレアアース禁輸の強硬措置を取ってきた際に「漁夫の利」を得る可能性がある企業に目を付けておきたい。
- 米中問題の一方で、欧州リスクが顕在化しつつある。イギリスではメイ首相が辞任して「合意なき離脱」リスクが高まり、ドイツでは欧州議会選挙と地方議会選挙において国政第2党で連立政権を担うドイツ社会民主党が惨敗し、メルケル政権の先行き不透明感が強まっている。折しも、コメルツ銀行との合併破談によってドイツ銀行の株価が2018/12の安値を更新して下落している。ドイツ銀行問題解決には、ユーロ圏およびドイツの景気回復、ならびに政治の安定が不可欠である。欧州リスクの落ち着きが米国株式相場にとっても必要だろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/24現在)
■主な企業決算 の予定
●5月29日(水):PVH、キーサイト・テクノロジーズ
●5月30日(木):ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー、コストコホールセール、クーパー、ギャップ、アルタ・ビューティ
■主要イベントの予定
●5月28日(火)
・FHFA住宅価格指数 (3月)
・主要20都市住宅価格指数 (3月)
・消費者信頼感指数 (5月)
●5月30日(木)
・クラリダFRB副議長、講演
・GDP(1Q、改定値)
・卸売在庫 (4月)
・新規失業保険申請件数 (25日終了週)
・中古住宅販売成約指数 (4月)
●5月31日(金)
・個人所得・支出 (4月)
・ミシガン大学消費者マインド指数 (5月)
●6月1日(土)
・中国が米国からの輸入品600億ドル相当への関税率引き上げ
●6月3日(月)
・マークイット米国製造業PMI
・ISM製造業景況指数(5月)
・建設支出(4月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
本レポートの発行元:フィリップ証券株式会社〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町4番2号
TEL:03-3666-2101 URL: http://www.phillip.co.jp/
本レポートの作成者:フィリップ証券 リサーチ部
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 国際公認投資アナリスト 笹木和弘
公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員補 増渕透吾
当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提 供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の 見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身 の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害につ いても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じま す。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項> 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
こんなに豊富?IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品(エネルギー、農産物、貴金属)など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。