「パラダイム・シフト」の波に備えた投資戦略を!
米国ウィークリー 2019/2/13号
- 2018年4Q決算発表も終盤に差し掛かり、IBES Dataによれば、2/8時点の決算発表済みS&P500構成企業のうち71.5%が市場予想を上回っている一方で、2019年1Q(1-3月)についてのアナリスト増益率(対前年同期比)予想が年初の5.3%増から0.1%増に低下して来ており、米中貿易協議の進展懸念が業績予想に暗雲をもたらしている状況といえよう。そこで、昨年10月以降の株価急落と年末以降の上昇が持つ本質的意味合いについて概略を述べたい。
- 昨年8/13に成立した米国「国防権限法2019」、同10/4のペンス副大統領によるワシントン・ハドソン研究所での演説は、米中新冷戦構造の「パラダイム・シフト」、即ち、1989年の「ベルリンの壁崩壊」(東西冷戦終結)による米国一極集中の資本主義グローバル化という従来パラダイムの転換を予感させるものであった。市場主義、規制緩和等を通じて、ヒト・モノ・カネ・情報が自由に国境を超え、最適国(主に新興国)で生産する国際分業が進展し、先進国では産業空洞化、国内雇用喪失と非正規雇用の比率が増加、特に日本では慢性的デフレ(物価下落、実質賃金低迷)、低金利からゼロ・マイナス金利の長期化などが引き起こされた。トランプ政権による「新冷戦構造への回帰」によって世界的に「反グローバリズム」、「分断化」が引き起こされ、従来のパラダイムが反転していく可能性もあるだろう。
- 新冷戦構造が避けられないとすれば、「米中貿易協議」は抜本的な解決には成りにくい一方で、米中とも、金融市場への影響を最小限に留めたい点ではニーズが一致しており、マーケットに醸し出される希望的観測や期待の振れに相場が振らされ易くなっている。直近の米国株価における急速な戻りもそのような文脈で捉えるべきであろうが、「希望的観測」にも限度があることも予め念頭に置くべきであろう。その意味では、新冷戦構造シフトによるボラティリティ(変動性)の波をできる限り回避する方向に物色対象をシフトしていくのが理想だが、従来パラダイムに基づく投資であっても、波のタイミングを上手く捉えることが可能ならば、大きなチャンスにも転化できよう。
- なお、最近の注目点として、米エピック・ゲームズ社(非上場)が開発したシューティングゲーム「フォートナイト」が米国で社会現象化している。ゲーム業界だけでなく動画配信のネットフリックス社も警戒感を顕わにするなど、限られた消費者の時間と予算を巡り、業界の垣根を超えた争いが勃発している。同社の評価額は150億ドル程度とされるが、出資者には中国のテンセントや、米ウォルト・ディズニー、大手ファンドのKKRなどが名を連ねており、いずれ上場圧力が強まる可能性もあろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(2/12現在)
■主な企業決算の予定
●2月12日(火): IPGフォトニクス、ウェルタワー、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ、WECエナジー・グループ、マーチン・マリエッタ・マテリアルズ、オムニコム・グループ、アンダーアーマー、モルソン・クアーズ、アクティビジョン・ブリザード、オキシデンタル・ペトロリアム、トリップアドバイザー、UDR、アカマイ・テクノロジーズ、アシュラント
●2月13日(水):グローバル・ペイメンツ、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス、インターパブリック・グループ、ディッシュ・ネットワーク、CBREグループ、フリアーシステムズ、フェデラル・リアルティー・インベストメント・トラスト、ダビータ、シスコシステムズ、MGMリゾーツ・インターナショナル、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ、マラソン・オイル、ウィリアムズ・カンパニーズ、HCP、インターナショナル・フレーバー&フレグランス、ネットアップ、リージェンシー・センターズ、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、エクイニクス、センチュリーリンク、CFインダストリーズ・ホールディングス
●2月14日(木):クエスト・ダイアグノスティクス、ウエイスト・マネジメント、バルカン・マテリアルズ、IQVIAホールディングス、アイアンマウンテン、アメレン、PPL、ボルグワーナー、ハンティントン・インガルス・インダストリーズ、ゾエティス、コカ・コーラ、インサイト、デューク・エナジー、CMEグループ、アリスタネットワークス、アプライド・マテリアルズ、CBS、エヌビディア
●2月15日(金):クラフト・ハインツ、ムーディーズ、ペプシコ、ディア、ニューウェル・ブランズ
■主要イベントの予定
●2月12日(火)
・クリーブランド連銀総裁、カンザスシティー連銀総裁講演
・EU財務相理事会
・求人件数 (12月)
●2月13日(水)
・クリーブランド連銀総裁講演、アトランタ連銀総裁講演
・NZ中銀、政策金利発表
・国際エネルギー機関(IEA)月報、NATO国防相会議(ブリュッセル、14日まで)
・CPI(1月)、財政収支(12月)
・ユーロ圏鉱工業生産 (12月)、英物価統計 (1月)、台湾GDP(4Q、改定値)
●2月14日( 木)
・英議会、離脱案修正の審議採決
・PPI(1月)、新規失業保険申請件数 (9日終了週)、小売売上高(12月)、企業在庫(11月)
・ユーロ圏GDP (4Q、改定値)、 独GDP (4Q、改定値)、マレーシアGDP(4Q)
・中国貿易収支 (1月)
●2月15日( 金)
・アトランタ連銀総裁講演
・つなぎ予算期限
・ミュンヘン安全保障会議(17日まで)
・輸入物価指数 (1月)、鉱工業生産(1月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (2月、速報値)、対米証券投資 (12月)
・欧州新車販売台数 (1月)、中国CPI・PPI (1月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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