「利下げ期待」のハトの鳴き声がこだまする市場
米国ウィークリー 2019/6/25号
- 先週は中央銀行総裁の役者揃い踏みでハト派宣言の大見得を切ったかのような週だった。6/18にECBドラギ総裁が「(見通しが改善せずにインフレ圧力が強まらない場合は)追加の刺激策が必要になるだろう」と語った。次に、6/19にFRBパウエル議長がFOMC後の記者会見で「景気拡大を保つため適切な政策対応をとることを検討していく」と述べ、米国債10年物利回りが2%を割り込む場面もあった。6/20に日銀黒田総裁が現状維持決定後の会見にて、金利変動幅を「厳格にとらえる必要はない」と弾力的対応を探る姿勢を明らかにした。
- 6/21時点の金利先物市場は次回FOMCでの利下げをほぼ100%織り込んだ。セントルイス連銀のブラード総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁とも物価上昇率がFRB目標の年率2%を下回っている点を問題視し、「現状では低失業率がインフレリスクをもたらす証拠は殆どない」(ブラード総裁)、「2%の物価目標に達するようインフレ期待を支えるためにFRBは力強く行動すべきだ」(カシュカリ総裁)と政策金利の思い切った引き下げに向けて株式市場を力強く「期待」の上昇軌道に導くかのようだった。トランプ大統領も1%の利下げを要求している。
- 6/28-29のG20大阪サミットを控えて米中協議再開への「期待」も相場上昇のエンジンとなり、NYダウは6/21に26,907ドルの高値を付け、昨年10/3の高値26,951ドルに迫った。テクニカル面では2018/1の高値26,616ドルと2018/10の高値26,951ドルを結んだ直線を上値抵抗線と見れば、27,200-27,300ドル近辺が目先の目標値になりやすい。ただし、2018/12のG20ブエノスアイレス・サミットでは米中首脳会談後の株式市場は「期待で買って事実で売る」展開だったこと、および5/5の対中国追加関税発表に見られるように株価上昇により政策に自信を深めるトランプ大統領が対外的に強気の政策に打ち出しやすくなることから、現状からの株価上昇に対しては警戒を強めるに越したことはないだろう。
- 利下げ期待による長短金利の低下は、借入コスト低下および将来期待キャッシュフローの割引現在価値増加を通じ、拡大意欲の強いスタートアップ企業への追い風となりやすい。6/20にはSlack Technologies Inc(WORK)が新規上場を行ったが、ソフトウェアのサブスクリプション継続課金モデルを武器に売上総利益を上回る営業費用投入といった強気の財務戦略を取るSaaS企業の躍進が目立つ。景気先行きへの慎重姿勢から株式市場全体への資金流入が膨らみにくい中では、IPO銘柄に資金が向かいやすい環境が続くこともあり得よう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(6/21現在)
■主な企業決算 の予定
●6月25日(火):マイクロン・テクノロジー、レナー、フェデックス
●6月26日(水):ゼネラル・ミルズ、ペイチェックス
●6月27日(木):マコーミック、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、コナグラ・ブランズ、ナイキ
●6月28日(金):コンステレーション・ブランズ
■主要イベントの予定
●6月25日(火)
・ニューヨーク連銀総裁・フォーラムで開会の挨拶
・アトランタ連銀総裁、リッチモンド連銀総裁講演
・セントルイス連銀総裁・イベントで開会の挨拶
・FRBのパウエル議長、講演
・FHFA住宅価格指数(4月)、主要20都市住宅価格指数(4月)、新築住宅販売件数(5月)、消費者信頼感指数(6月)
●6月26日(水)
・民主党、大統領候補者討論会(マイアミ、27日まで)
・卸売在庫(5月)、耐久財受注(5月)
●6月27日(木)
・FRB、銀行ストレステストの第2段階となる包括的資本分析(CCAR)の結果発表
・GDP(1Q・確定値)
・新規失業保険申請件数(22日終了週)、中古住宅販売成約指数(5月)
・独CPI(6月)、中国工業利益(5月)
●6月28日(金)
・個人所得・支出(5月)、ミシガン大学消費者マインド指数(6月)
・ユーロ圏CPI(6月)、英GDP(1Q)
●6月29日(土)
・G20首脳会議2日目の討議、議長国会見(大阪)
●6月30日(日)
・中国製造業・非製造業・コンポジットPMI(6月)
●7月1日(月)
・マークイット米国製造業PMI(6月、確定値)
・ISM製造業景況指数(6月)
・建設支出(5月)
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