トランプ劇場「MAGA」~苦境脱出から反転攻勢へ
米国ウィークリー 2019/4/9号
- 「ロシア疑惑」の苦境から脱出したトランプ大統領が2020年の再選に向けて「Make America Great Again(MAGA)」のボルテージを上げてきた。先週の米国株式市場は、S&P500では昨年1月下旬高値を超え、テクニカル面では昨年10月上旬高値2,940ポイントをピークとするヘッド・アンド・ショルダー(三尊構成)を否定し、最高値更新に向けて視界が開けてきた。4/5発表の3月雇用統計も、非農業部門の就業者数は前月比19.6万人増で市場予想を超え、3月平均時給の伸びが前年同月比3.2%増と前月の3.4%増から鈍化するなど、「適温相場」継続による株価上昇期待を抱かせる内容だった。
- ロシア疑惑を捜査してきたモラー特別検察官が3/22に捜査報告書をバー司法長官に提出、3/24にバー長官が「トランプ大統領がロシアと共謀した証拠はない」、「司法妨害の罪を犯したと確定するには証拠が不十分」との結論を議会に報告。トランプ大統領も「完全な潔白、再び米国を偉大に」とツイートした。
- ここからトランプ大統領の攻勢が勢いづいてきた。まず、FRBの金融政策への影響力拡大のために、FRB理事の空席ポストに長年のトランプ氏支持者であるスティーブン・ムーア氏、および元ピザチェーン経営者のハーマン・ケイン氏を指名する意向を示した。3/29のクドロー国家経済会議委員長による「FRBは政策金利を”直ちに”0.5%引き下げるのが望ましい」旨の発言に加え、トランプ大統領自身が4/5に「FRBは利下げすべきだ。資産縮小は中止を」と発言し、金融政策を巡って圧力を強めた。実体経済より株価上昇を優先する「トランプ経済学」の下では、景気減速の懸念が無くとも「利下げが善」ということなのだろうか。
- 今や大統領選再選に向けて「トランプ・ファースト」の姿勢を強めている。キリスト教福音派支持固めのためにイスラエルのゴラン高原主権を認め、米中協議に対しても鉄鋼やアルミニウムへの輸入関税撤廃に慎重なスタンスを強調し、大統領選で鍵を握る「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」に配慮している。3月雇用統計も自動車産業を中心に製造業の雇用者数は6,000人減であり、ラストベルトの支持固めのために自動車輸入関税まで踏み込むのかどうか要警戒である。周囲と軋轢を起こすことで「世界がどれだけ反対しようと、支持者である貴方のために自分は頑張っている」というメッセージを強め、支持基盤を強固にしていくのが「トランプ劇場」の本質だろう。順調に行くばかりではドラマの面白みに欠けるが、株価上昇にとっては順調に行くに越したことはないだろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(4/5現在)
■主な企業決算 の予定
●4月10日(水):デルタ航空
●4月11日(木):ファスナル
●4月12日(金):PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、ファースト・リパブリック・バンク、ウェルズ・ファーゴ
■主要イベントの予定
●4月9日(火)
・FRBのクラリダ副議長、講演
・IMF、世界経済見通し(WEO)発表
・求人件数 (2月)
●4月10日(水)
・欧州中央銀行(ECB)金融政策会合・ドラギ総裁記者会見
・欧州連合(EU)臨時首脳会議
・CPI (3月)
・財政収支 (3月)
・FOMC議事要旨(3月19-20日開催分)
●4月11日(木)
・20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン、12日まで)
・FRBのクラリダ副議長およびセントルイス連銀総裁、講演
・韓国の文在寅大統領が訪米、トランプ米大統領と会談
・北朝鮮、最高人民会議第14期第1回会議を招集
・PPI (3月)
・新規失業保険申請件数 (6日終了週)
・中国CPI・PPI (3月)
●4月12日(金)
・IMF・世銀の春季総会(14日まで、ワシントン)
・英国のEU離脱期限
・輸入物価指数 (3月)、
・ミシガン大学消費者マインド指数 (4月、速報値)
・ユーロ圏鉱工業生産 (2月)
・中国貿易収支 (3月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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