トランプ劇場~大統領選挙対策モード突入か?
米国ウィークリー2019年8月27日号
- 8/23は株式市場に衝撃が走った。中国が米国から輸入する製品に対して5-10%の追加制裁関税を課す発表をしたのに対し、トランプ大統領が既に関税を課している2,500億ドル相当の中国製品に対する関税を10/1以降に現在の25%から30%に引き上げ、新規に9/1と12/15に分けて課す予定の中国製品3,000億ドル相当に対する「関税第4弾」についても税率を10%から15%に引き上げる対抗措置を発表した。更に米企業に対して中国からの事業撤退を要求するなど、米中対立が深刻化する様相を呈した。トランプ大統領の批判の矛先は中国だけでなく、FRBのパウエル議長にも向けられている。8/23のジャクソンホールでの講演で「適切に行動する」と述べたが、今後の利下げペースの手掛かりを示さなかったことに対して「パウエル議長と習近平主席のどちらが大きな敵なのか」とツイート。8/1の対中追加関税発表も7/31のFOMC翌日のタイミングだったことを見ると、対中国追加関税発表には、利下げに積極的になれないパウエル議長への批判の意味合いも含まれているように思われる。
- また、今回の「対抗措置」発表ついては、8/22にNYダウで終値26,252ドルと高値圏にあったことも無視できない。8/1の発表もNYダウ前日終値が26,864ドル、5/5の追加関税発表もNYダウ5/3終値が26,504ドルの高値圏だった。株高を政権への支持率の高さと捉えるトランプ大統領にとって、株価の水準としても短期的な下落を許容できるだけの余裕があり、選挙の支持基盤である「ラストベルト」の製造業、および「コーンベルト」の農家の支持固めに向けて強硬策に打って出る好タイミングとして捉えられているものと推察される。今後も、大統領選挙が意識されるに連れて株価水準などのタイミングを計りつつ選挙対策としての色彩が強い強硬的な貿易・通商政策が発動される可能性が高いと予想される。
- 不安定な相場環境の中、企業業績の先行きに明るさが見られる。5-7月期の主要企業決算の中では小売業のウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)はネット通販が好調。ホームセンターのホーム・デポ(HD)やロウズ(LOWS)も市場予想を上回る好決算だった。高い賃金上昇率と伸び悩む物価上昇率による可処分所得の増加が堅調な消費に寄与していると見られる。キーサイト・テクノロジーズ(KEYS)は5G通信を手掛ける「通信ソリューション」部門の増収率が13%に達し、セールスフォース・ドットコム(CRM)もクラウド関連の売上が好調。これらは米中摩擦激化に左右されにくい業種として位置づけられるだろう。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(8/23現在)
■主な企業決算の予定
●8月27日(火):JMスマッカー、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、オートデスク
●8月28日(水):コティ、ティファニー、ブラウン・フォーマン、H&Rブロック、PVH
●8月29日(木):ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー、ベストバイ、アルタ・ビューティ
●8月30日(金):キャンベルスープ
■主要イベントの予定
●8月27日(火)
・FHFA住宅価格指数(6月)、主要20都市住宅価格指数(6月)、消費者信頼感指数(8月)
・独GDP(2Q)
・中国工業利益(7月)
●8月28日(水)
・リッチモンド連銀総裁、講演
・ユーロ圏マネーサプライ (7月)
●8月29日(木)
・サンフランシスコ連銀総裁、講演(ニュージーランド)
・世界人工知能大会(上海、31日まで)、テスラCEOイーロン・マスク氏が出席予定
・GDP(2Q、改定値)、卸売在庫(7月)、新規失業保険申請件数(8月24日終了週)、中古住宅販売成約指数(7 月)
・ユーロ圏景況感指数(8月)、独失業率(8月)、独CPI(8月)
・ブラジルGDP(2Q)
●8月30日(金)
・個人所得(7月)、個人支出(7月)、ミシガン大学消費者マインド指数(8月)
・ユーロ圏失業率(7月)、ユーロ圏CPI(8月)
・印GDP(2Q)、韓国中銀政策金利発表
●8月31日(土)
・中国製造業PMI(8月)、中国非製造業PMI(8月)
●9月1日(日)
・米、中国 からの輸入品に10%追加関税を一部品目対象に発動
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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