サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害疑惑を受け、同国政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の運用に影響が及ぶ可能性がある。欧米企業がサウジとの関係を見直していることが背景にある。
石油に頼らない国造りを目指すムハンマド皇太子の改革の下、経済多角化のけん引役としてPIFは運営されている。2030年までに2兆ドル規模のファンドに育てる方針をサウジは打ち出している。
こうしたなか、PIFが35億ドルを出資する大口投資先である米配車大手ウーバーテクノロジーズは11日、記者殺害疑惑を受け、ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)が、登壇する予定であったサウジでの23日からの経済フォーラム「砂漠のダボス会議」に出席しない方針を表明した。
また、英ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン氏は11日のブログ投稿で、宇宙事業ヴァージン・ギャラクティックとヴァージン・オービットがPIFとの協議を停止すると発表。その上で、疑惑が事実であれば、西側の誰もがサウジとのビジネスに関して対応を変更することになるだろうとの見方を示した。
今回、同疑惑による最大の影響を受けた日本企業はソフトバンクだろう。17年に発足したソフトバンクの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」にPIFは450億ドルを出資しており、さらに450億ドルを追加出資するとみられている。ビジョン・ファンドに潜在的なリスクがあるとの見方から、問題の浮上後にソフトバンク株価は一時急落した。ソフトバンク首脳は、ファンドへの影響を判断するには時期尚早との見方を示しているという。
ムハンマド皇太子の話としてメディアが伝えたところによれば、PIFの資金は現時点で3000億ドル超。サウジ基礎産業公社(SABIC)の持ち分売却や将来のサウジアラムコの新規株式公開(IPO)などで、今後数年間に1700億ドルの資金が入ると見込んでいるという。