英国の欧州連合(EU)離脱が近づくなか、世界の主要金融機関がロンドンから欧州大陸の都市に拠点を移す準備が加速している。16日には米銀大手ウェルズ・ファーゴが投資銀行部門の欧州拠点をロンドンからパリに移すため、フランス当局に業務用ライセンスを申請したと発表。ロンドンの金融面での優位性が今後、大きく損なわれる可能性がある。
EUは加盟国のいずれかで金融業の免許を取得すれば全域での営業を可能とする「単一パスポート」制を採用している。主要金融機関の多くが英国でパスポートを取得し、金融の集積が高いロンドンを欧州拠点としてきたが、EU離脱により再考を迫られている。
ウェルズ・ファーゴも今回の決定は英国のEU離脱に向けた措置であるとし、パリで欧州大陸の顧客に対して資本市場業務と投資銀行業務を提供すると表明。
JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループなど他の米大手行や英HSBCもまたパリへの業務移転の準備を進めている。一方、日本の金融機関は野村ホールディングスや大和証券グループ本社、三井住友フィナンシャルグループが将来の欧州の中核拠点にフランクフルトを選択。三菱UFJフィナンシャル・グループは投資銀行業務の欧州拠点をアムステルダムに移すとしている。
森記念財団都市戦略研究所が毎年10月に発表する「世界の都市総合力ランキング」で、ロンドンは最新発表の2017年まで6年連続で総合1位。経済や研究・開発、文化・交流の各分野で高い評価を得てきた。パリは総合4位でアムステルダムは7位。経済分野に限れば両都市とも上位10位圏外だ。
世界の金融首都ロンドンの地位はいかに。今後の欧州各都市の力関係が注目される。