11日の東京株式市場でジャパンディスプレイ(JDI)とルネサスエレクトロニクスが安い。両社に出資している官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)の民間出身取締役9人の辞任を受け、政府が19年度予算案で要求していた1600億円を全額取り下げる方針を表明。両社の経営再建に対する不透明感が広がった。
JDIは6日続落。終値は7円(11.86%)安の52円。前場で51円まで下げ、上場来安値を更新した。この日の出来高は東証1部銘柄で4位。
米アップルの「iPhoneXR」の販売低迷を受け、JDIの12月の同製品向け液晶パネルの生産が、フル稼働が続いた前月までの水準からおよそ30%減ることが見込まれるとの報道も重しになり、この数日間、下値模索が続いている。
JICは子会社のINCJ(旧産業革新機構)を通じ、JDI株を25%保有している。
JICがINCJを通じて33%出資しているルネサスエレクトロニクスは16円(3.09%)安の502円。終盤に500円まで下げ、年初来安値を更新した。
JICは事実上の休止
高額報酬を巡る批判に端を発した経済産業省との対立により、JICは事実上の休止に追い込まれた。JICの田中正明社長は10日の会見で、自身を含む民間出身の9人の取締役が全員辞任し、新規投資を凍結すると発表した。
JICは今年9月にINCJを引き継ぐ形で発足した。既存案件についてはINCJに残し、期間内の投資回収を目指している。2019年春から新規出資はJICが担う計画だった。
世耕経済産業相は11日の閣議後の会見で、財務基盤強化に充てるために19年度予算案で要求していた1600億円を全額取り下げる方針を表明。経営陣が実質的に不在となるなか、予算要求はふさわしくないとの見方を示した。