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NY天然ガス価格18%急騰、3つの上昇要因で重要な抵抗ラインの攻防に、目先の見通し

NY天然ガス先物価格の上昇が止まらない。今月末にアメリカ北部で気温が氷点下になるとの予想で暖房需要の増加観測が高まるなか、ガスの在庫が減少。さらにロシアーウクライナ情勢の緊迫化も重なり、今週に入り18%急騰している。目先はボラティリティの拡大を意識する状況が続こう。

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記事のポイント

  • 止まらないNY天然ガス先物価格の上昇、今週に入り18%急騰
  • 天然ガス価格が急騰している3つの要因
  • 天然ガス価格は重要なレジスタンスラインの攻防に
  • 2つの下落要因に要注意

止まらないNY天然ガス先物価格の上昇、今週に入り18%急騰

アメリカの大統領選挙と議会選挙以降、国際商品市況ではNY天然ガス先物価格(以下では天然ガス価格)の上昇幅が拡大している。NY原油先物価格北海ブレント先物価格と比べると、その急騰ぶりが分かる。今週に入り天然ガス価格が18%以上急騰している背景には、3つの要因がある。

エネルギー先物価格の動向

エネルギー先物価格の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月5日を100として指数化、11月21日までの動向

天然ガス価格、3つの急騰理由

気温低下による暖房需要の増加観測

アメリカの北部では、今月末の感謝祭から来月の初旬にかけて気温が氷点下になることが予想されている。寒気予想は、暖房に必要な燃料の需要増の思惑を強めている。

在庫の減少

米国のエネルギー省エネルギー情報局(EIA)が発表した最新の在庫統計によれば、天然ガスの商業用在庫が30億立方フィート減少した。暖房需要の増加が見込まれている状況で、アナリストの増加予想(予想中央値で10億フィート増)に反して在庫が減少したことで、需給のひっ迫観測が天然ガス価格のさらなる押し上げ要因になるとの見方が強まっている。

商業用天然ガスの在庫推移:週次 24年5月以降

商業用天然ガスの在庫推移:週次 24年5月以降

EIAとブルームバーグのデータで筆者が作成

緊迫化するウクライナ情勢と供給懸念

寒気予想にともなう暖房需要の増加観測と在庫の減少に加えて、今は緊迫化するロシアーウクライナ情勢も天然ガス価格の押し上げ要因となっている。

19日未明にウクライナ軍は、アメリカから供与された射程の長いミサイルATACMS(エイタクムス)6発を使いロシア西部ブリャンスク州への攻撃を行った。報復としてロシア軍が、ウクライナ東部への攻撃でICBM大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射したと、ウクライナ軍が発表した。

一方、ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部への攻撃で使用したのは新型の「中距離弾道ミサイル」と述べ、ICBMの使用を否定した。

双方の主張に隔たりがあるが、いずれにせよウクライナによるATACMSでの攻撃は、ロシアが核兵器の使用基準を引き下げるきっかけになったとの懸念が強まっている。欧州の地政学リスクは、天然ガスの供給懸念を高め価格の上昇要因となっている。


天然ガス価格の見通し、重要なレジスタンスラインの攻防に注目

NY天然ガス先物価格(天然ガス価格)のトレンドを日足と週足のチャートで確認すると、テクニカルの面で重要な局面にあることが分かる。以下に注目ポイントをまとめた。

・昨日、フィボナッチ・エクステンション100%の水準3.503レベルを日足ローソク足の実体ベースで突破した

・日足のMACDとモメンタムは強気相場に勢いがあることを示唆している

・上で述べた3つの上昇要因で今日以降も上値トライが続く場合は、フィボナッチ・リトレースメントの全戻し3.66レベルが視野に入ろう

NY天然ガス先物価格:日足 23年10月以降

NY天然ガス先物価格:日足 23年10月以降

出所:TradingView

・一方、週足チャートでも天然ガス価格がテクニカルの面で重要な水準をトライしていることが分かる。その水準とは、22年の急騰時の高値と24年2月の安値から算出されるフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準3.578レベルである

・23.6%戻しの突破は、3.66レベルをトライするサインと捉えたい。天然ガス価格が後者の水準をも突破すれば、節目の4.00ドルが視野に入ろう

NY天然ガス先物価格:週足 22年以降

出所:TradingView

レジスタンスライン

・4.000:節目の水準(週足)
・3.660:全戻し(日足)
・3.578:フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準(週足)

2つの下落要因に要注意

短期間での急騰で、10日線や13週線との乖離が広がっている。また、日足のモメンタムも過去1年間の高水準にある。これらの状況は、天然ガス価格の過熱感を市場参加者に意識させるだろう。ゆえにこの先は、上昇局面での突発的な下落を警戒したい。調整要因として、目先は2つの材料に注目したい。

・一つは、欧州地政学リスクの一時的な後退である。ウクライナによるATACMSの攻撃で、ロシアーウクライナ紛争のリスクベルが一段上昇したことは間違いない。しかしその一方で、これ以上のエスカレーションを避けるための妥協点を巡る水面下の交渉が両国の間で行われるだろう。一時的な妥協にせよ、緊張緩和のヘッドラインが流れる場合は、短期間で急騰した天然ガス価格の下落要因となろう

・もうひとつは在庫の増加である。11月に入り在庫の増加が抑制の傾向にある(上の在庫チャートを参照)。今夏も同じ状況にあった。しかし、8月上旬に在庫が60億立方フィート減少した後に増加へ転じた。来週以降、在庫増が確認される場合は、天然ガス価格の調整売り要因として利用されるだろう

注目のサポートライン

・「山高ければ谷深し」。天然ガス価格が下落する場合は、3.20ドル付近への下落を警戒したい。この水準は、レジスタンスラインからサポートラインへ転換する可能性がある。10日線が3.19レベルまで上昇している

・21日の安値3.368ドルの下方ブレイクは、3.30トライのサインと捉えたい。そして3.30ドルの下方ブレイクは、3.20ドルをトライするサインとなろう

サポートライン

・3.368:11月21日の安値
・3.300:サポートライン
・3.200:サポートラインへ転換する可能性あり
・3.190:10日線(日足)


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