50日線を意識するNY金価格、焦点は投機筋の買いと米国の経済指標、目先の見通しは?
NY金価格(XAU、スポット)は現在、50日線で上昇が止められている。しかし、その一方で下値も堅い。その要因の一つが投機筋の買いにある。今週の金価格は、アメリカの経済指標でトレンドが左右される展開が予想される。今日は5月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数が材料視される可能性がある。目先、注目しておきたいチャート水準は?
この記事のポイント
・NY金価格は現在、50日線とレジスタンスラインを意識する状況にある
・しかし投機筋の買いに支えられ下値も堅い、目先の焦点は2.300レベルの維持
・今週の金価格は、米国の経済指標で上下に振れる展開が予想される
・目先注目しておきたい上下のチャート水準について
金価格、上昇トレンドへの回帰はまだ先
50日線、レジスタンスライン、そして2,380レベル
スポットのNY金価格(XAU、以下金価格)は1日、小幅ながらも上昇した。
この日の米債市場では10年債利回り(長期金利)が一時4.5%手前まで上昇する局面が見られた。外為市場では対主要通貨で米ドル高優勢の展開となった。それでも金価格が上昇した状況は、地合いの強さが戻りつつあることを示唆している。
しかし、金価格が上昇トレンドの回帰に向かっていると判断するのはまだ早い。50日線すら突破できずにいるからだ。昨日の上昇も、この移動平均線で止められた(下の日足チャートを参照)。そして、日足のMACDは依然としてゼロラインを下回る状況にある(下のチャート、赤矢印を参照)。
また、50日線を突破しても、すぐ上には短期レジスタンスラインが推移している。そしてIGコモディティレポートで注目している重要なレジスタンスの水準「2,380」も控えている。
これら3つのテクニカルラインを完全に突破しない限り、金価格の上昇局面では常に戻り売りを警戒しておきたい。
下落の局面では3つの水準を意識する状況が続く
金価格(XAU)の下落局面では、引き続き2,300ドルの攻防が焦点となろう。テクニカルの面では、半値戻しの水準2,298レベルの攻防に注目したい。
金価格が2,300ドル以下の攻防へシフトする場合は、6月7日の安値2,286レベルの維持が焦点として浮上しよう。
金価格が2,286レベルをも下方ブレイクする場合は、IGコモディティレポートで注目している重要なサポート水準「2,275」レベルのトライを意識したい。
NY金価格(スポット)のチャート:日足 24年3月以降
出所:TradingView
金価格、注目のチャート水準
上昇トレンド転換の鍵は投機筋
金価格(XAU)が再び上昇トレンドへ回帰するのかどうか?その鍵を握るのが、中銀の動向である。
そして、投機筋もその鍵を握る。
米先物取引委員会(CFTC)のデータによれば非商業部門(Non-Commercial)のショート(売り)ポジションは減少の傾向にある。対照的にロング(買い)のポジションは24年3月以降、増加の傾向にある。直近は横ばいで推移しているが、断続的な買いを受け28万枚前後での高い水準を維持している。
ロングポジションの推移と金価格の動きを照らし合わせてみると、ほぼ同じ動きをしている。
注目すべきは、4月以降の動向である。投機筋の断続的な買いは見られるが、3月の時のように大きく仕掛ける動きは見られない。ゆえに、金価格も底堅さは維持しているが上値も重い、というもどかしい状況に陥っている(下のチャート、黒枠を参照)。
しかし筆者は、2024年の下半期に再び投機筋が金の買いを仕掛けてくると予想している。中東では現在、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が激化しており情勢が緊迫化している。この状況は今後も続くだろう。そして11月にはアメリカの大統領選挙も控えている。
先行き不透明感を高めるイベントに加えて、年内にも米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ政策へ転じる可能性も高い。これらはいずれも金の買いを仕掛ける理由になり得る。
非商業部門のポジション動向:週次ベース 23年以降
今週は米経済指標にらみの1週間に
投機筋の動向は中長期のスパンで追う必要がある。ゆえに、目先金価格のトレンドを左右するのは米金利と米ドル相場である。これら市場のトレンドは今週、アメリカの経済指標に左右されることが予想される。
今日は5月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数が発表される。2022年3月以降、求人件数は減少の一途にある(下のチャートを参照)。5月も795万件と、4月の805.9万件から減少する見通にある。
労働市場の動向はFRBの政策に大きな影響を与える。ゆえに求人件数が予想以上に減少する場合は、9月利下げの期待が高まることで、「米金利の低下→米ドル売り優勢」の展開が予想される。このケースでの金価格(XAU)は、50日線の突破と短期レジスタンスラインのトライを想定しておきたい(一番上の日足ローソク足チャートを参照)。
一方、JOLTS求人件数が予想外に増加する場合は、逆の展開が予想される。このケースでは、金価格の下落と2,300ドルのトライを想定しておきたい。
雇用動態調査(JOLTS)求人件数 2021年以降
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