次の焦点は日銀イベント、植田日銀総裁の言動に注目 /ドル円の見通し
9月のFOMCでは、パウエルFRBのインフレ抑制重視の姿勢があらためて確認された。次の焦点は日銀イベントとなろう。今回の金融政策決定会合でさらなる政策の修正を予想する向きは少ない。よって市場参加者は、植田日銀総裁の言動に注目するだろう。ドル円の見通しとチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・9月のFOMCでは、パウエルFRBのインフレ抑制重視の姿勢があらためて確認された
・今日の日銀イベントでは、植田総裁の言動に市場参加者の注目が集まろう
・ドル円の下落局面では21日線の攻防、反発局面では昨日高値の突破が焦点に
パウエルFRBはインフレ抑制重視の姿勢を維持
米連邦準備理事会(FRB)は20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、予想どおり政策金利の据え置きを決定した。
声明文では、経済活動については堅調なペースで(at a solid pace)拡大しているとした。一方、雇用の伸びについては、ここ数カ月は鈍化したが力強さを維持している(remain strong)と評価した。
FOMCメンバーによる最新の経済と物価の見通しが公表された。今回の内容で読み取れることは―
【読み取れること】
・経済成長:金融引き締め政策の影響を受けても、米国経済は堅調さを維持する
・失業率:上昇はするが、そのペースは緩やかになる
・コアインフレ率:鈍化の傾向を辿るが、物価目標の2%へ低下するまでには時間を要する
そして最新の政策金利の予想(ドット・プロット)を確認すると年内の追加利上げ、および利上げサイクルが終了しても高い水準で政策金利を維持する方針が示された。
つまりパウエルFRBは、米国の経済が底堅さを維持しているうちに、インフレリスクの芽を確実に潰すため、金融引き締めの姿勢を長期に渡り維持する方針をあらためて示してきた。
9月の経済・物価・政策金利の見通し
焦点は植田日銀総裁の言動
今日の注目イベントは、日銀金融政策決定会合となろう。
7月の会合で日銀は、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正し、長期金利の上限を事実上1%に引き上げた。国内の長期金利は昨日、0.745%と2013年9月以来10年ぶりの高水準を付けた。
しかし、米金利の上昇幅が拡大傾向にあることで、日米の利回り格差も拡大傾向を維持している(下チャート赤ゾーンを参照)。この状況は、ドル円(USD/JPY)の下支え要因となろう。
日米の利回り格差の動向:日足 年初来
短期金融市場(OIS)では、日銀が金融政策の正常化に向かうとの観測が根強い。しかし、今回の会合で日銀がさらなる政策の修正に動くと予想する向きは少ない。ゆえに市場参加者は、植田日銀総裁の会見内容に注目しよう。
9月9日付の読売新聞の単独インタビューで植田日銀総裁は、マイナス金利政策の解除について言及した。ゆえに今回の会見では、具体的な金融政策の正常化プロセスに関する言動が注目される。
また、円相場に関する言動の有無にも注目したい。訪米中の岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、円相場の過度な変動は望ましくないと述べた。経済面だけでなく、政治の面でもこれ以上の円安は許容できないことを示唆する発言である。
円安の進行について植田日銀総裁は、「政府と連絡を取りつつ、経済・物価への影響をきちんと評価する」と述べている(読売新聞の単独インタビュー)。直接的ではないにしても暗に円安をけん制する発言がある場合は、短期的な円の買戻しを想定しておきたい。
ドル円、今日の見通しとチャートポイント
米金利の上昇基調と米ドル高
金融引き締め姿勢を維持するパウエルFRB、インフレの低下を阻む原油高、そして米国債の需給に関する不透明感まで意識されやすい状況にあることを考えるならば、目先の米金利は上昇または高止まりする可能性がある。
米金利が上昇基調を維持すれば、外為市場では米ドル高のトレンドが続くことが予想される。
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、5月31日の高値104.70レベルがサポートの水準へと転換し、上昇基調のトレンドチャネルを維持している。
ドルインデックスが次の上値ポイントである105.88レベル(3月8日高値)をも上方ブレイクする場合は、米ドル高トレンドの強さを市場参加者に印象付けよう。そして米ドル高トレンドは、ドル円(USD/JPY)をサポートしよう。
ドルインデックスのチャート:日足 23年3月以降
調整の反落を警戒
ドル円(USD/JPY)は、強固なレジスタンスの水準として意識されてきた148.00レベルを日足ローソク足の実体ベースで完全にブレイクアウトし、高値148.46レベルまで上昇する局面が見られた。
しかし、148.00レベルの “サポート転換” には失敗した。強気地合いの後退を示唆するMACDの動向も考えるならば、今日は調整の反落を警戒しておきたい。
本日、ドル円が下値をトライする場合、まずは21日線の攻防に注目したい。この移動平均線は今日現在、147.07レベルで推移している。ゆえに21日線の攻防は、147円台を維持する攻防でもある。
岸田首相が円安をけん制し、日米の株式市場は下落リスクを警戒する状況にある。このタイミングで植田日銀総裁の言動が円高の要因となれば、ドル円は147円台を下方ブレイクし、今月11日の下落局面で相場をサポートした146.00レベルを視野に下落幅の拡大を想定しておきたい。
反発の局面では昨日の高値148.46の突破が焦点に
一方、今日の日銀イベント(特に植田日銀総裁の言動)を受け、あらためて連邦準備制度理事会(FRB)との金融政策スタンスの差が意識される場合は、ドル円(USDJPY)の反発が予想される。
このケースでは、148円台への再上昇と昨日の高値148.46レベルの突破が焦点となろう。
ドル円が148.46レベルを完全に突破する場合は、IG為替レポートで注目しているフィボナッチ・エクステンション76.4%の水準149.00レベルを視野に、上昇幅の拡大を想定しておきたい。
しかし、政府サイドからは円安をけん制する発言が続いている。ゆえに、ドル円の上昇局面では、不意打ちのような反落(円買い)を常に警戒しておきたい。
ドル円のチャート:日足 23年3月以降
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