米ドル高のトレンドが加速 / ドルインデックスとドル円の次なる上値のターゲットは?
米金利の上昇基調を受け、外為市場では米ドル高のトレンドが加速している。今日の注目材料は4月の米PCEデフレーターとなろう。インフレ圧力の根強さが確認される場合、ドルインデックスとドル円はさらなる上値トライが予想される。それぞれの次の上値ターゲットは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・短期金融市場では6月FOMCの利上げ確率が五分五分の状況に転じている
・インフレ懸念と利上げ長期化の観測を受けて米金利は上昇基調を維持している
・米ドル高のトレンドが加速し、ドルインデックスはさらなる上値トライのムードに
・今日のドル円の展望とテクニカルポイントについて
米金利の上昇が続く
25日の米債市場では、利回りが上昇基調を維持した。米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは3月13日以来となる4.5%の水準へ上昇した。
FEDウォッチツールで次回の連邦公開市場委員会(FOMC、6月13-14日開催)の利上げ確率を確認すると、本日7時の時点で利上げ確率が五分五分となっている。6時過ぎ時点では、6月の利上げ確率が50%を超えていた。
上で述べた2年債利回りの動向や長期の期待インフレ率(ミシガン大学5-10年先の期待インフレ率)の上昇が確認された後に、上昇幅が拡大している10年債利回りの動向も考えるならば、現在の米債市場と短期金融市場では、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制重視のスタンスを維持し、利上げへ傾く可能性を意識する状況にある。
市場が織り込む6月FOMCの利上げ確率
加速する米ドル高のトレンド
インフレ懸念と6月の利上げ観測の高まりを受けて、米金利は上昇基調を維持している。この米金利の動きは、外為市場で米ドル高のトレンドを加速させる要因となっている。
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は重要ポイントの104.00レベルを難なく突破し、104.31レベルまで上昇している。
今後も米金利の上昇基調が続く場合、ドルインデックスはフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準104.68レベルをトライする展開が予想される。
米ドル高がさらに加速する要因として、本日は下で述べる米国の重要インフレ指標に注目したい。
ドルインデックスのチャート
今日の注目材料
米金利の上昇と米ドル高のトレンドが続くかどうか?この点を考える上で、本日は4月の米個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の内容に注目が集まるだろう。
市場予想は前月比で0.3%増、前年比で4.3%増といずれも前月の0.1%増および4.2%増から上昇する見通しとなっている。
一方、変動の大きい食品やエネルギーを除いたPCEコアデフレーターは前月比で0.3%増、前年比で4.6%増と前月から横ばい推移の予想となっている。
下のチャートで前年比の推移(ラインチャート)を確認すると、米国のインフレはすでにピークアウトしていることが分かる。しかし、現在のインフレリスクの焦点は「インフレが順調に鈍化していくのか?」にある。
ゆえに、PCEデフレーターが予想外に強い伸びを示す場合は、インフレリスクの根強さと6月利上げの観測が米債市場で意識され、利回りには上昇圧力が高まることが予想される。米金利が上昇基調を維持する場合、外為市場では米ドル高がさらに進行することが予想される。
また、PCEコアデフレーターが予想どおり横ばい推移となってもインフレリスクが意識される可能性がある。上で述べたとおり米債市場の参加者は、インフレが鈍化のトレンドを形成するかどうか?を注視する状況にある。よって、PCEコアデフレーターの横ばい推移は、インフレが鈍化しないリスクを想起させる可能性があろう。
アメリカ PCEデフレーターの推移
ドル円の展望とテクニカルポイント
上昇の土台は日米の利回り格差の拡大
ドル円(USDJPY)は昨日、節目の140.00レベルを難なく突破した。そして高値140.23レベルまで上昇する局面が見られた。
今の上昇相場の土台となっているのは、日米の利回り格差である。下のチャートを確認すると、ドル円の上昇幅の拡大と日米利回り格差の拡大のトレンドが一致していることが分かる(緑ゾーンを参照)。
今日のドル円は、上で述べた4月の米PCEデフレーターで上下に振れる展開が予想される。パウエルFRBが重視するこの物価指標でインフレ圧力の根強さが確認される場合は、「米金利の上昇→米ドル高→ドル円の上昇」を想定しておきたい。
一方、米PCEデフレーターがインフレ懸念の後退要因となれば、急速に進行した米ドル高を調整する展開が予想される。このケースでは、ドル円の反落を想定しておきたい。しかし、6月利上げの可能性が意識されている状況を考えるならば、ドル円の下落幅は限定的となることが予想される。
ドル円と日米利回り格差のチャート
次に注目しておきたい上値のターゲットは?
ドル円(USDJPY)のMACDは、地合いの強さを示唆するトレンドを維持している。3月24日の安値を起点とした2本目の短期サポートラインの傾きが急になっている状況も、上昇トレンドに勢いがあることを示している。
4月の米PCEデフレーターが米金利の上昇要因となり今日もドル円が続伸する場合、目先の上値ターゲットは141.00の突破となろう。昨日の高値140.23レベルの上方ブレイク、そして反落の局面でこの水準(140.23レベル)や140円台の維持に成功する場合は、ドル円が141.00を目指すシグナルと想定しておきたい。
テクニカルの面で注目したいのが、142.50レベルである。この水準は、22年の最高値151.94レベルと23年1月の安値127.22レベルのフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。
また、この水準(142.50レベル)は、22年11月11日に相場の上昇止めた経緯がある(この時の高値は142.48レベル)。そして同年11月21-22日の市場でも同様の展開が見られた。同年11月23日の高値141.61レベルの突破は、142.00レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円が142.00レベルをも完全に突破する場合は、61.8%戻しの水準142.50レベルの攻防を想定する展開となろう。
ドル円のチャート
反落局面での焦点は?
一方、ドル円(USDJPY)が反落し140円台の維持に失敗する場合は、フィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防に注目したい。
目先の焦点は23.6%戻しの139円ミドルレベルの攻防である。だが、反落時にこの水準がサポートとして意識された経緯が見当たらない。
サポートとして意識されたのはその下の38.2%戻しの水準139.15レベルである。短期間で上昇幅が拡大してきたことを考えるならば、ドル円の反落局面では下落幅の拡大を警戒し139円台の維持を目先の焦点と想定しておきたい。
直近高安の半値戻し138.80レベルが、レジスタンスからサポートへ転換していることが分かる。現在のドル円の地合いの強さを考えるならば、ドル円が一気に138円台へ急落する可能性は低い。しかし上で述べたとおり、短期間でドル円の上昇幅が拡大している。ゆえに、調整局面では不意に下落幅が拡大する展開も警戒しておきたい。ドル円が139円をブレイクする場合は、138.80レベルまでの下落を想定しておきたい。
ドル円のチャート
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