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パラジウム先物は株価、投機筋そして中国景気にらみの状況に、目先の見通しは?

世界的な株価の上昇に連動し、パラジウム先物価格も反発の基調にある。しかし、投機筋の動向と中国の製造業が低迷している状況を考えるならば、パラジウム先物価格は反落の可能性を常に警戒しておきたい。目先の見通しは?注目のチャート水準は?

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記事のポイント

・世界的な株価の上昇に連動し、パラジウム先物価格が反発基調へ転じている
・目先は、新たな高値水準の見極めが焦点となろう
・投機筋の売りと中国製造業の低迷は、パラジウム先物価格の重しとなろう
・パラジウム先物価格、目先の見通しと注目のチャート水準について

パラジウム先物、注目のチャート水準

上値の水準(レジスタンス)

・967:リトレースメント61.8%戻し
・950:100日線、レジスタンス転換を意識する水準
・938:半値戻し

下値の水準(サポート)

・915:リトレースメント23.6%戻し
・898:20日線
・880:半値戻し
・864:リトレースメント61.8%戻し


パラジウム先物価格の展望とチャート分析

上値のトライを意識する局面ではあるが

パラジウムの総需要のうち約8割が産業用といわれている。具体的には、ガソリン車の排ガスを浄化する触媒、電子部品そして歯科治療の銀歯などの用途に使われる。ゆえにパラジウム先物価格(PAU4)は景気の動向を受けやすい。

7月以降、米国経済の先行き懸念が意識され、世界的に株価が急落する局面が見られた。しかし現在は、過度の米景気不安が後退し、世界の株式市場は再び騰勢のムードが高まっている。

そしてパラジウム先物価格は現在、株価上昇の動きと連動している。日足チャートで直近のトレンドを確認すると、7月高値と8月5日安値の半値戻しの水準938ドルを完全に突破している。

ゆえに次の焦点は100日線(今日現在950ドル、下チャートの赤ラインを参照)、そしてフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準967ドルのトライが焦点として浮上しよう。

後者の水準967ドルをも上方ブレイクすれば、節目の1,000ドルが視野に入ろう。

しかし、パラジウム先物価格が上記のテクニカルラインを突破しても、常に反落の可能性を意識しておきたい。そう考える理由の一つが、投機筋の動向である。

パラジウム先物価格:日足 今年4月以降

パラジウム先物価格:日足 今年4月以降 出所:IGチャート

投機筋とパラジウム先物の関係

投機筋の動向は、パラジウム先物価格(PAU4)のトレンドに大きな影響を与える。この点を下のチャートで確認すると、投機筋は常にネットショート(売り越し)の状況にある。そしてパラジウム先物の価格は、ネットショートの動きに連動していることが分かる。

直近は、ショートポジションの急増によりネットショートが6月以来の高水準まで積み上がっている。世界的な株高も考えるならば、調整目的でパラジウム先物の買戻しが予想される。ゆえに、目先のパラジウム先物価格は、上で述べたレジスタンスの水準をトライする展開を想定しておきたい。

しかし、7月の米失業率が4.3%へ上昇し、サームルールの経験則※ではアメリカ経済が景気後退に向かっている可能性が示唆された。ゆえに、今後の経済指標次第では、再び米景気後退の懸念が高まる可能性が水面下でくすぶる。

また、下で述べる中国の製造業不振も考えるならば、パラジウム先物価格の上昇局面では、常に反落を警戒しておきたい。

※米連邦準備制度理事会(FRB)元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案した指標。直近3カ月間の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回る場合、景気後退の確率が高まという。直近は0.53ポイントまで上昇し、アメリカ経済が景気後退入りする可能性が示されている。

パラジウム先物価格と投機筋の動向:週次 過去1年間

パラジウム先物価格と投機筋の動向:週次 過去1年間 米国商品先物取引委員会(CFTC)とブルームバーグのデータで筆者が作成

低迷する中国の製造業

中国の国家統計局が7月31日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と、3ヶ月連続で景気判断の分かれ目となる「50」を下回った。新規受注も3ヶ月連続で縮小した。

また、財新/S&Pグローバルが今月1日発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は6月の51.8から49.8へ急低下し、こちらも景気判断の分かれ目である「50」を下回った。内訳をみると、新規受注が1年ぶりに減少し、生産は9カ月ぶりの低い伸びにとどまった。

上で述べたとおり、パラジウム需要の約8割は産業用である。ゆえに世界第2位の経済規模を誇る中国の製造業が低迷する状況は、パラジウムの需要減の懸念を市場参加者に想起させる。

今は世界的な株価上昇でパラジウム先物価格(PAU4)が反発の基調にある。しかし、今後発表される中国の経済指標で引き続き企業活動の縮小が確認される場合は、パラジウム先物価格の重しとなろう。

この点は、アメリカの経済指標にも言える。目先は、来週22日の8月購買担当者景気指数(PMI)速報値が米国株とパラジウム先物価格の変動要因となる可能性があろう。

パラジウム先物価格の反落局面では、冒頭の日足チャートにプロットした20日線(今日現在898ドル)とフィボナッチ・リトレースメントの各水準の攻防に注目したい。

中国 製造業購買担当者景気指数(PMI):23年以降

中国 製造業購買担当者景気指数(PMI):23年以降 ブルームバーグのデータで筆者が作成

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