今週の注目材料 / ドル円の見通しとチャートポイント
8月の米雇用統計は、労働市場が軟化の傾向にあることを示唆する内容となった。しかし、米長期金利は上昇で反応した。今週の外為市場は、米経済指標とFRB要人の言動で動くことが予想される。今週のドル円の見通しは?注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※今週のユーロドルの見通しについては、「こちらのレポート」をご覧ください
サマリー
・8月雇用統計の内容に米長期金利は上昇で反応した
・今週の外為市場は引き続き米経済指標にらみの状況が続くだろう
・またブラックアウト期間に入る前のFRB要人の言動にも注目が集まろう
・今週のドル円は144.50-146.50レンジのブレイクが焦点となろう
今週の焦点について
焦点1:米経済指標
米労働省が1日に発表した8月の雇用統計は、労働市場が軟化の傾向にあることを示唆する内容となった。
非農業部門雇用者数変化は市場予想の17万人を上回る18.7万人となった。しかし、6月と7月の増加分は下方修正された。また、3ヶ月平均のトレンドは減少の傾向にある。賃金は前月比と前年比でともに7月から低下し、賃金インフレの抑制傾向が確認された。
失業率は3.8%へ上昇した。しかし今回の上昇は、労働参加率の上昇が影響していることが一因である。このため、失業率については単月の結果ではなく今後数か月の動向を確認する必要があろう。
米雇用統計の推移:月次 22年8月以降
重要なのは8月の雇用統計に対する市場の反応、特に米長期金利の反応である。
8月雇用統計の結果を受け、米長期金利は上昇で反応した。労働市場が軟化の傾向にあることを示す内容でも長期金利が上昇したことは、連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換を促すほど労働市場は軟化しておらず、その状況が今後も景気を下支えする可能性を米債市場の参加者が意識していることを示唆している。
米長期金利のチャート:5分足 1日の米雇用統計発表後の動向
米長期金利の動向は外為市場のトレンドを考える上で重要な指標である。ゆえに今週の外為市場は、米経済指標にらみの展開が続くだろう。
注目の経済指標は、今週6日の8月購買担当者景気指数(PMI)改定値と同月ISM非製造業景気指数である。
購買担当者景気指数(PMI)の推移を確認すると、改善傾向にあったサービス業PMIが5月を境に失速している。総合指数もこのトレンドに追随し、景気判断の分かれ目である「50」が目前に迫る状況にある。
購買担当者景気指数(PMI)の推移:月次 22年以降
一方、ISM非製造業景気指数も低下のトレンドにある。8月の予想値は52.5。前月の52.7から小幅に低下する見通しである。予想以上に低下する場合は、米長期金利の低下要因となろう。ゆえに、さえない経済指標は米ドル安の要因となろう。
逆に、これら景気関連の経済指標が総じて強い内容となる場合は、米長期金利の上昇要因となろう。米長期金利の上昇は米ドル高の要因となろう。
ISM非製造業景気指数の推移:月次 22年以降
焦点2:FRB要人の言動
今週の9日より、連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間に入る。ゆえに市場参加者は、米金融政策に携わる要人の言動から将来の政策動向のヒントを探ろうとするだろう。
クリーブランド地区連銀のメスター総裁は1日、米国の労働市場について均衡化の兆候が出ているが、依然として力強いと指摘した。インフレ率については上昇圧力の軽減が見られるが、依然として高すぎるとの認識を示した。
今週は6日にボストン地区連銀のコリンズ総裁が、経済と政策についての講演を行う。7日にはニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁がブルームバーグ主催の市場フォーラムに参加する(質疑応答あり)。また、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が経済見通しについての討論会に参加する。そして8日には、ダラス地区連銀のローガン総裁が金融政策についての講演を行う。
8月雇用統計の内容を受けてなお、FRBの高官がインフレリスクの根強さや雇用および経済の底堅さに言及する場合は、米長期金利の上昇と米ドル買いの要因となろう。一方、インフレリスクの後退や利上げの停止に含みを持たせるハト派よりの発言が聞かれる場合は、米長期金利の低下と米ドル売りの要因となろう。
ドル円:今週の見通しとチャートポイント
次の材料待ちムード
今日は米国市場がレイバーデーで休場となる。よって、今週のドル円(USD/JPY)は明日以降の動きに注目したい。
今週の焦点は、144.50-146.50レンジの上限と下限、どちらをブレイクするのか?この点にある。
通貨オプション市場のリスクリバーサルの動きを確認すると横ばいでの推移が続いており、次の材料待ちムードにある。その材料として注目したいのが、上で述べた経済指標やFRB要人の言動である。
ドル円とリスクリバーサルのチャート:日足 23年5月以降
焦点は144.50-146.50レンジのブレイクアウト
1日の日足ローソク足が長い下ヒゲ付きの下陰陽線だったことを考えるならば、ドル円は現時点で146.50レベルを目指す可能性が高い。ゆえに、上で述べた注目材料が米金利の上昇要因となれば、ドル円はレンジの上限である146.50レベルのブレイクアウトを想定しておきたい。
ドル円の146.50ブレイクアウトが確認される場合は、147円台への再上昇が次の焦点となろう。
ドル円が147円台へ上昇する場合は、8月29日の高値147.37レベル(N計算値の水準147.34レベル)や22年11月7日の高値147.57レベルのトライが焦点として浮上しよう。
後者のレジタンスポイント(147.57レベル)をも突破する場合は、148.00を視野にドル円の上昇幅が拡大する展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足 23年7月下旬以降
144円ミドルの底堅さを再確認
一方、ドル円(USD/JPY)の下値トライの局面では、144.50レベルの攻防が焦点となろう。
先週1日の日足ローソク足のかたち(下陰陽線)は、このレベルが重要なサポートの水準であることをあらためて示した。
直近高安の半値戻しが144.44レベルにあたることも考えるならば、テクニカルの面でも144円ミドルはドル円のトレンドを見極める上で重要な水準である。
21日MA(今日現在145.40レベル)の下方ブレイクは、144円ミドルを目指すシグナルのひとつと想定しておきたい。
144円ミドルのブレイクアウトは、レンジ相場を下方ブレイクすることを意味する。ゆえに、ドル円のトレンドが転換するシグナルの一つになり得る。このケースでは、50日MA(今日現在143.23レベル)のトライを次の焦点と想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足 23年7月下旬以降
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