今週の注目材料は米国の経済指標 / ドル円の見通しとチャートポイント
先週の講演でパウエルFRB議長は、データ重視の姿勢をあらためて示した。今週はアメリカの重要経済指標が多く発表される。市場参加者の関心は7月のPCEデフレーターと8月の雇用統計に集まろう。それぞれの焦点は?今週のドル円の見通しは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・パウエル講演に新味はなく外為市場の焦点はアメリカ経済指標へシフト
・今週の米ドル相場は、インフレと雇用関連の経済指標で上下に振れることが予想される
・上値のトライが続くドル円は147円台への上昇を意識する状況に
・ドル円の反落局面では144円ミドルの維持が焦点となろう
今週の注目材料はアメリカの経済指標
7月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)
先週24日~26日にアメリカのワイオミング州で開催された経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、これまでの姿勢-インフレ抑制重視の姿勢とデータ次第で追加の利上げを行う姿勢を示した。
講演の内容自体に新味はなく、米ドル相場のトレンドに影響を与えるアメリカ10年債利回り(長期金利)の上昇幅は限られた。他の長期ゾーンの利回りも同様の展開となった。
アメリカ長期金利のチャート:5分足 8月25日の動向
外為市場では米金利の高止まりが米ドル相場のサポート要因となり、米ドル買い優勢の展開となった。
しかし全面高とはならず、南アランドやメキシコペソなど一部の新興国通貨では下落した。
米ドル相場の動向:8月25日
パウエルFRB議長は、データ重視の姿勢を維持している。よって多くの市場参加者は、9月以降の連邦公開市場委員会(FOMC)の動向を見極めるため経済指標、特にインフレと雇用に関連した経済指標に注目するだろう。
今週の31日に7月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される。パウエルFRBが注視するPCEコアデフレーターは、昨年9月を境に低下の基調にあり、FOMCの参加者が予想している23年末の予想「3.9%(6月時点の予想)」へと着実に近づいている。
7月のデータでも基調的なインフレの低下トレンドが確認される場合は、追加利上げの観測が後退することで、「米金利の低下→米ドル売り」の展開が予想される。
一方、PCEコアデフレーターが予想値(前月比:0.2% / 前年比:4.2%)を超えて上昇する場合は、追加利上げの観測が高まろう。このケースでは、アメリカの長期金利が短期的にもう一段上昇することが予想される。長期金利の上昇はアメリカ株の下落要因となる可能性がある。よって後者のケースでは、米ドル買いの進行を想定しておきたい。
アメリカ個人消費支出価格指数の動向
8月雇用統計では非農業部門雇用者数変化と賃金の動向が焦点に
PCEコアデフレーター以外でもう一つ注目すべき経済指標が、来月1日に発表される8月の雇用統計である。焦点は、非農業部門雇用者数変化と賃金の動向となろう。
非農業部門雇用者数変化は16.8万人と、7月の18.7万人から減少する見通しとなっている。一方、賃金は前月比と前年比でともに7月から低下する見通しである。これらの結果が予想どおり、またはそれ以下の内容となれば、「追加利上げの観測が後退→アメリカ長期金利の低下」を受け、外為市場では米ドル売り優勢の展開が予想される。
一方、非農業部門雇用者数変化と賃金が予想以上に強い内容となれば、追加利上げの観測が高まろう。アメリカの債券市場では、長期金利に上昇の圧力が高まることが予想される。長期金利の上昇は米国株の下落要因になり得る。よって、後者のケースでの外為市場は、対主要通貨で米ドル高の進行が予想される。
アメリカ雇用統計の動向
なお今週は、雇用統計の他に7月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数や8月のADP雇用統計などの雇用関連指標も発表される。これらも米金利と米ドル相場の変動要因として注目しておきたい。
今週のドル円の見通しとチャートポイント
147円台への上昇が焦点に
ドル円(USD/JPY)は先週、146.63レベルまで上昇し、地合いの強さを維持する状況が続いた。
日銀の植田総裁は26日、カンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)のパネル討論会で、基調的なインフレが依然として物価目標の2%を若干下回っていると考えていること、これが現行の金融緩和政策を維持する理由であると述べた。
パウエルFRB議長の政策姿勢に変化が見られなかったことも考えるならば、今週も日米金融政策スタンスの違いを意識したドル円の上値トライを想定しておきたい。
ドル円の上昇局面で注目すべきは、先週25日の高値146.63レベルのブレイクアウトである。これが確認される場合は、147.00レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円が147円台へ上昇する場合は、IG為替レポートで何度か取り上げたN計算値の水準147.34レベルや、昨年11月7日の高値147.57レベルの攻防が次の焦点となろう。後者のレジタンスポイントをも突破する場合は、148円のトライを想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足 6月下旬以降
一方、さえないアメリカの経済指標などでドル円(USD/JPY)が反落する場合は、先週25日のIG為替レポートで指摘した144円ミドル(144.50-60)ゾーンの維持が焦点となろう。
144.67レベルは、現時点での8月高安のリトレースメント38.2%の水準にあたる。また、今日現在21日MAが144.55レベルまで浮上している。テクニカルの面でも144.50-60のゾーンは重要なサポートの水準である(上の日足チャートを参照)。
ドル円が上のサポートゾーンをトライするシグナルとして、先週25日の相場を下支えした10日MA(今日現在145.85レベル)の攻防に注目したい(上の日足チャートを参照)。下の水準145.70レベルでは、サポートへ転換するムードが見られる(下の4時間チャートを参照)。
ドル円が145.70台を完全に下方ブレイクする場合は、現時点での8月高安のリトレースメント23.6%の水準145.42レベルおよび145.00レベルの攻防が次の焦点として浮上しよう。
ドル円のチャート:4時間足 8月以降
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