年末の株高要因を見極めて年越しへ
米国ウィークリー 2019年12月24日号
- 2019年も残すところ1週間となり、本号が年内最終号となった。12/20の米国株式市場でダウ工業株30種平均株価(NYダウ)が史上最高値を連日更新し、終値で28,455ドルを付けた。昨年末からの上昇幅は5,127ドル高でこれまで最大だった2017年の年間上昇幅4,911ドルを上回っている。年末を迎えるに当たり、現在の株高の要因を改めて考察しておきたい。
- まず、直近の株高加速の大きな要因は、FRBがドル金利高騰を防ぐため越年の資金供給を約4,900億ドル実施することを発表したことが挙げられる。米大手銀が金融規制対応で余剰資金を抱え込む状況が続き、年末にかけてドルの需給逼迫が強まるおそれがあるためとされるが、この点に関して注意が必要なのは2000年になるとコンピュータが誤作動して世界的な大混乱が起きるのではないかと懸念された「Y2K問題」と類似している点である。当時のグリーンスパンFRB議長は年末までに大規模な資金供給を実施し、ITバブルを引き起こす要因になったと指摘されることもある。大きな混乱が発生せずに年を越した後、株式市場がピークを付けたのが2000/3下旬だったことが思い出される。
- 次に、企業業績や景気指標との関連から見た場合、12/15に発動予定だった1,600億ドル分の米国の対中追加制裁関税第4弾の影響が大きかった点が重要だろう。設備投資に慎重になる企業が増える一方で、5Gなどの次世代技術に対しては追加関税が発動される前にできるだけ在庫と出荷を増やしておこうという心理が働いたのではないだろうか。特に中国や欧州の製造業関連の景気指標が年末に向けて改善したことにその辺りの心理が現われているように思われる。中国では中国政府支援の通信事業者が11月より大都市で5Gサービスを正式に提供開始した。制裁関税によるダメージを被る前に前倒しで5G関連技術を実用化させることで米中技術覇権戦争に優位に立とうという中国側の意欲の表れでもあろう。結果的には12/15の関税第4弾の発動は回避されたが、トランプ大統領は2020年の大統領選挙に向け、支持者へのアピールのための追加制裁関税カードを温存しているだけという見方もできる。前倒しで次世代技術のための生産と出荷を増やそうという企業心理は継続する可能性があろう。
- 年末要因の流動性供給が後押ししたと見られる株式相場の動向には年明け以降も注視が必要だろう。その一方、2020/1下旬の中国の春節の時期には中国発で市中への流動性供給が行われる可能性にも目を向けたい。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(12/20現在)
■主な企業決算の予定
主な米国企業の決算発表の予定はありません。
■主要イベントの予定
●12月24日(火)
・欧米市場、短縮取引または休場
●12月25日(水)
・米・欧州・香港休場
●12月26日(木)
・欧州・香港休場
・米新規失業保険申請件数(21日終了週)
●12月27日(金)
・ECB経済報告、中国工業利益(11月)
●12月30日(月)
・シカゴ購買部協会景気指数(12月)、住宅販売保留指数(11月)
●12月31日(火)
・FHFA住宅価格指数(10月)、S&PコアロジックCS米住宅価格指数(10月)、コンファレンスボード消費者信頼感指数(12月)
●1月2日(木)
・新規失業保険申請件数(28日終了週)、製造業購買担当者景気指数PMI改定値(12月)
・Caixin製造業購買担当者景気指数PMI(12月)、ユーロ圏製造業購買担当者景気指数PMI改定値(12月)
●1月3日(金)
・建設支出(11月)、ISN製造業景況指数(12月)、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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