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雇用統計の強さが意味するものは?

米国ウィークリー2019年12月10日号

Source:Bloomberg
  • 12/6に発表された11月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から26.6万人増と予想の18万人を超えて増加し、伸びは10ヵ月ぶりの大きさになった。9月と10月の雇用者数も合わせて4.1万人ほど上方改定された。12/2に発表された11月の米供給管理協会(ISM)製造業景気指数が景気拡大・縮小の節目となる50を4ヵ月連続で下回る48.1となるなど製造業部門の低迷が続く中でも米経済が緩やかな成長を続けていることが示された。米国株式市場もこれを好感し、12/6のダウ工業株30種平均株価(NYダウ)終値は前日比337ドル高の28,015ドルと大幅に上昇。その一方、同日のドル円相場は雇用統計発表直後に108円90銭台までドル高円安となったものの、ニューヨーク時間の終値では108円台半ばまでドル安円高となるなど、株式市場とは対照的な動きを示した。
  • 今後の株式投資のストラテジーを考えていく上で11月の雇用統計の強さをどのように見ていくべきだろうか?先ず、トランプ政権が中国との第1段階の通商合意を交渉するための時間的な余裕が確保されたと見ることができよう。トランプ大統領も「我が国の経済は世界の羨望の的であり、おそらく我が国の歴史で最も偉大な経済を見ている」とツイートした。米中貿易摩擦を恐れずに強気で制裁関税を課してきた政策に自信を深め、一段と強硬路線をとる可能性があろう。既に12/2にブラジルやアルゼンチンからの鉄鋼・アルミニウムの輸入に対し追加関税を課すことが発表され、12/6にEUに最大100%の関税を上乗せする方針が発表された。強い雇用統計により、12/15に米国が発動を予定している対中制裁関税第4弾の発動の可能性が高まるかも知れず、要注意であろう。
  • 次に、非農業部門雇用者の増加数の内訳では、ヘルスケア部門が6.0万人増、レジャー・接客業が4.5万人増である一方、製造業は、ゼネラル・モーターズGMのストライキ終了の影響を除けば8千人増にとどまった。レジャー・接客業は8-11月で21.9万人増であり、労働生産性および賃金の伸び率が製造業と比較して相対的に低い業種への偏りが見られ始めている。11月の平均時給伸び率は前年同月比3.1%と16ヵ月連続で3%台の伸びを保ったが、経済全体の賃金上昇率が鈍化しやすい構造へと変化しやすくなっている可能性はあろう。
  • 市場参加者の間では、4年ごとの大統領選挙サイクルにおいて過去の平均データから任期3-4年目の株式投資パフォーマンスが同1-2年目を上回ることが知られている。2020年に向けてジンクス通りになるのか、注目されよう。(笹木)

S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(12/6現在)

■主な企業決算の予定

●12月10日(火):オートゾーン

●12月12日(木):アドビブロードコムオラクルコストコホールセール

■主要イベントの予定

●12月10日(火)

FOMC11日まで)

・ノーベル賞授与式、アルゼンチン大統領にアルベルト・フェルナンデス氏が就任、ゲオルギエワIMF専務理事の講演(ワシントン)

・労働生産性(3Q)

・独ZEW期待指数(12月)、英鉱工業生産(10月)、中国CPIPPI11月)

●12月11日(水)

FOMC声明発表パウエルFRB議長の記者会見・経済予測発表

・ブラジル中銀が政策金利発表

・OPEC月報

CPI11月)、財政収支(11月)

●12月12日(木)

・欧州中央銀行(ECB)金融政策会合・ラガルド総裁の記者会見、フィリピン中銀が政策金利発表

EU首脳会議(13日まで)英総選挙、国際エネルギー機関(IEA)月報

・新規失業保険申請件数(12月7日終了週)、PPI(11月)

・ユーロ圏鉱工業生産(10月)、独CPI(11月)、ロシアGDP(3Q)

●12月13日(金)

・ニューヨーク連銀総裁の講演

・ロシア中銀が政策金利発表

小売売上高(11月)、輸入物価指数(11月)、企業在庫(10月)

●12月15日(日)

・安倍首相がインド訪問(17日まで)

米が対中追加関税発動中国が対米追加関税発

●12月16日(月)

ニューヨーク連銀製造業景気指数(12月)、マークイット米国製造業・サービス業・コンポジットPMI(12月)、NAHB住宅市場指数(12月)     (Bloombergをもとにフィリップ証券作成)



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