「不況」和音を恐れたりしない?
米国ウィークリー2020年2月4日号
- 新型肺炎の感染拡大への懸念に加え、米国務省による中国への渡航警戒レベルの最高水準への引上げに伴い米主要航空会社が相次いで米中間の直行便取りやめなどの措置を発表した。その後、金融マーケットのあちこちから不況の足音が一斉に鳴り響き始めたかのような様相を呈してきた。米国株式市場は1/31にダウ工業株30種平均(NYダウ)の終値が603ドル安の28,256ドルとなり、1/17に付けた過去最高値から3.8%安となった。同日のWTI原油先物価格は終値が1/8に付けた直近高値から21%安の1バレル51.63ドルを付けた。更に、同日の債券市場では10年債利回りが1.501%へ、2年債利回りは1.337%へ低下し、10年債と3ヵ月財務省証券の利回り格差が逆イールドになる場面も見られた。2年債と5年債利回りは政策金利の誘導目標である1.50-1.75%の下限を下回り、Fed WatchによるとFRBが9月までに最低1回の利下げを決定する確率が79%まで急上昇した。その他にも銅価格やバルチック海運指数などの商品市況が下げ足を強めるなど、景気後退懸念の合唱が始まったかのようである。
- 1/29の米FOMC声明後のパウエルFRB議長の会見では、新型肺炎に関し「ウイルスは深刻な問題」、「FRBは感染拡大の状況を注意深く監視していく」といった発言が見られる一方、バランスシートについて4-6月まで拡大を継続するが、バランスシートに係る政策は柔軟に対応する旨を述べた。資産価格バブルを招く恐れを懸念する声が聞かれるレポ市場への資金供給についても、FOMC声明では少なくとも4月にかけて継続すると表明された。これらを鑑みると、新型肺炎が米国景気にとって「深刻な問題」と捉えられればバランスシートについて「柔軟に対応」する中で、現在は短期国債に限定されているFRBの資産買付が長期国債に対象が拡大し、かつ期間延長の可能性が出て来ても不思議ではない。
- 2019/10-12月期決算では、アップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)、フェイスブック(FB)、およびマイクロソフト(MSFT)といった時価総額1兆ドルを超える巨大IT企業が増収増益の業績を示した。仮に新型肺炎が景気に悪影響を与えるとした場合、特にデジタル経済においては「収穫逓増の法則」が働きやすいこともあり、弱肉強食の企業競争の中で大が小を飲み込む流れになる可能性もあろう。その一方、気候変動リスク対応に伴い、再生可能エネルギーへのシフトや化石燃料エネルギーに係るプロジェクトへの融資抑制などが石油エネルギー企業の業績悪化を加速する負の側面が見られ始めている点は懸念されよう。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(1/31現在)
主な企業決算の予定
●2月4日(火):ユナム・グループ、プルデンシャル・ファイナンシャル、アフラック、チポトレ・メキシカン・グリル、フォード・モーター、チャブ、オールステート、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー、アトモス・エナジー、サーナー、ファイサーブ、マイクロチップ・テクノロジー、KLA、グローブライフ、ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエーツ、ラルフローレン、ジンマー・バイオメット・ホールディングス、クロロックス、シーゲイト・テクノロジー、エマソン・エレクトリック、L3ハリス・テクノロジーズ、ウォーターズ、ヘルマリック・アンド・ペイン、マケッソン、イートン、サイモン・プロパティー・グループ、ジェイコブズ・エンジニアリング・グループ、コノコフィリップス、センティーン、ガートナー、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、カミンズ、ギリアド・サイエンシズ、トランスダイム・グループ
●2月5日(水):オライリー・オートモーティブ、リンカーン・ナショナル、FMC、メットライフ、コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、アバロンベイ・コミュニティーズ、ペイコム・ソフトウエア、クアルコム、ヒューマナ、ボストン・サイエンティフィック、シンシナティ・ファイナンシャル、フォックス、コティ、ゼネラル・モーターズ(GM)、アメテック、メルク、カプリ・ホールディングスDTEエナジー
●2月6日(木):DXCテクノロジー、ベリサイン、ナショナル・オイルウェル・バーコ、フォーティネット、メトラー・トレド・インターナショナル、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、フォーティブ、ノートンライフロック、アクティビジョン・ブリザード、フリートコア・テクノロジーズ、ニューズ・コーポレーション、モトローラ・ソリューションズ、ケロッグ、S&Pグローバル、フィリップ・モリス・インターナショナル、ザイレム、エスティローダー、シグナ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、インターコンチネンタル・エクスチェンジ、ボール、オールド・ドミニオン・フレイト・ライン、ウィリス・タワーズ・ワトソン、アビオメッド、タイソン・フーズ、ツイッター、ベクトン・ディッキンソン、カーディナルヘルス
ヤム・ブランズ、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、スナップオン、CDW、タペストリー
●2月7日(金):Cboe・グローバル・マーケッツ、アッヴィ
●2月10日(月):ロウズ、エベレスト・リーグループ、ダビータ
主要イベントの予定
●2月4日(火)
・米大統領一般教書演説、製造業受注(12 月)
●2月5日(水)
・ADP雇用統計(1月)、貿易収支 (12月)、ISM非製造業総合景況指数 (1月)
●2月6日(木)
・ダラス連銀総裁講演、新規失業保険申請件数 (2月1日終了週)、労働生産性(10-12 月)
●2月7日(金)
・米大統領選挙、民主党指名争う候補者による討論会(ニューハンプシャー州)
・米雇用統計(1月)、米卸売在庫(12月)、米消費者信用残高 (12月)
●2月8日(土)
・シカゴオートショー(17日まで)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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