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雇用統計ラリーは本物か?~忍び寄るリスクも

米国ウィークリー2020年6月9日号

Source: Bloomberg
  • 6/5発表の5月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比250万9,000人増と市場予想に反しプラスに転じたほか、失業率は13.3%と4月の14.7%から改善するといった好内容を受けて米株式市場は上昇。ダウ平均株価終値が前週末比1,727ドル高となり、ナスダック総合指数終値が前週末比324ポイント高となった。ナスダックの6/5の高値9,845ポイントは、2/19の高値を超えた。ナスダックの高騰は新型コロナウイルスのワクチンを開発するバイオテクノロジー、IT大手のGAFAM、および半導体などの銘柄に後押しされているが、3月下旬以降ほぼ一本調子で上昇してきたこともあり、過去14週間の指数の上げ幅(前週比)の合計と、同期間内の上げ幅の合計と下げ幅の合計を足した数字の比率(%)である週足のRSI(相対力指数)が、指数の上昇の動きとは逆に1-2月に対して6月の方が低下している。テクニカル分析上はこれをダイバージェンス(逆行)と呼び、相場転換を示唆する場合が多いと言われる点は要注意だろう。
  • その一方、S&P500業種別株価指数では、年初来の騰落率でマイナスが大きい「エネルギー」、「金融」、「資本財・サービス」が週間騰落率で上位となり、ダウ平均株価構成銘柄でも同様に、年初来の騰落率でマイナスが大きいボーイング(BA)エクソン・モービル(XOM)JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)が週間騰落率で上位にランキングされている。また、アメリカン航空グループ(AAL)の6/5終値が前週末比77%上昇となるなど、移動禁止などの厳しい措置により深刻な影響を受けた業種の株価が、経済活動再開に伴い「売られ過ぎ」から立ち直る局面を期待する相場に移行しつつあると見られよう。
  • 5月の好調な雇用統計を受け、米国10年国債利回りが6/5に0.9%を超えて上昇し短期債との利回り差が拡大している。景気回復の実体を伴うイールドカーブのスティープ化は望ましいと見られるが、米企業が「給与保証プログラム(PPP)」など政府の救済策の恩恵を受ける条件を満たすために一時解雇から職場復帰を急がせたといった特殊要因が大きく影響した可能性もある。6/10にはFOMCの声明発表およびパウエルFRB議長の記者会見が控えている。NY連銀による米国債の購入額が6/8以降に減額される見通しであり、長期金利の上昇を容認する姿勢が示唆されれば、強力な金融緩和による景気回復、およびドルインデックスの低下による新興国や資源国通貨への資金流入といったリスクオンの流れに水を差しかねない。今週のFOMCは注目に値しよう。(笹木)

S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(6/5現在)


主な企業決算の予定
●6月9日(火): ブラウン・フォーマン、ティファニー

●6月11日(木): アドビ、PVH

主要イベントの予定
●6月9日(火)
・FOMC(10日まで)
・米求人件数 (4月)、卸売在庫 (4月)

●6月10日(水)
・FOMC声明発表、議長記者会見と経済予測
・米CPI (5月)、財政収支 (5月)

●6月11日(木)
・米新規失業保険申請件数 (6日終了週)、PPI (5月)

●6月12日(金)
・米輸入物価指数(5月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (6月)

●6月15日(月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(6月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)



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本レポートの作成者:公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト 笹木和弘

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