ワクチン開発競争はもう一つのオリンピックか?
米国ウィークリー2020年6月2日号
- 5/25の米祝日メモリアル・ディ明けの米株式市場は、中国全人代で香港国家安全法が採択された際の米中対立激化への懸念、および新型コロナウイルス感染「第2波」のリスクといったマイナス要因に対し、経済活動再開に対する楽観的な見方、およびワクチン開発への期待といったプラス要因が優位に立つ展開となった。ゴールドマン・サックス・グループ(GS)といった金融、およびDOW Inc(DOW)といった資本財・サービスなどの景気敏感セクターが買われ、5/29終値は、ダウ平均株価が前週末比917ドル高の25,383ドル、ナスダック総合指数が同165ポイント高の9,489ポイントと堅調に推移した。
- 特に新型コロナウイルスのワクチン開発への市場の期待は根強い。来年に延期された東京五輪について、国際オリンピック委員会(IOC)では「必要な安全策が講じられれば21年大会を成功させることは可能」との見方を示しつつも、医療専門家の間では夏期五輪のような大規模かつ国際的なイベントを安全に開催するには予防ワクチンが欠かせないとの見解に傾きつつある。そのような状況下、現在、オリンピックと同様に国家の威信を賭けて新型コロナウイルスの予防ワクチン開発競争が繰り広げられ、主に米中企業の攻防が激しさを増している。米国勢は、モデルナ(MRNA)のワクチン候補が5/7に米食品医薬品局(FDA)からフェーズ2臨床試験開始を承認されたほか、ノババックス(NVAX)がワクチン候補についてヒトへの試験開始を発表。イノビオ・ファーマシューティカルズ(INO)も既にヒトを対象としたワクチンの治験を4月に開始している。これに対し中国勢は、カンシノ・バイオロジクスが5/25にフェーズ1臨床試験を完了した段階で世界で初めてヒトに対する効果が確認されたと発表したほか、シノバック・バイオテックが5月にワクチン候補のフェーズ2臨床試験を開始した。
- ナスダック総合指数の終値は過去最高値を付けた2/19に対し5/29が96.7%となった。これに対し、ナスダック上場のバイオテクノロジー株全体の時価総額加重平均指数であるナスダック・バイオテクノロジー株指数の終値は5/29が2/19比109.0%とナスダック総合指数のパフォーマンスを上回った。国策として年内のワクチン開発を目指す「ワープスピード作戦」が進められるなか、バイオテクノロジー株が年内の米国株式市場を牽引することが見込まれよう。また、ワクチンの開発が進めば量産体制の確立が更なる焦点となることが想定され、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)など製薬世界大手も今後は注目されよう。(笹木)
■S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/29現在)
■主な企業決算の予定
●6月3日(水): キャンベルスープ
●6月4日(木): ブロードコム、クーパー、ギャップ、JMスマッカー
■主要イベントの予定
●6月2日(火)
・米自動車販売 (5月)
●6月3日(水)
・米ADP雇用統計 (5月)、米製造業受注 (4 月)、米ISM非製造業総合景況指数 (5月)
●6月4日(木)
・米新規失業保険申請件数 (5月30日終了週)、米貿易収支 (4月)
●6月5日(金)
・米雇用統計(5月)、米消費者信用残高 (4月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成
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