コロナショックがネット社会の進化を後押しへ
米国ウィークリー2020年5月26日号
- 5/22まで週間の米株式市場は主要3指数ともに反発した。パウエルFRB議長が5/17にテレビ番組で追加の金融刺激策を示唆したことが材料視され、週明けのダウ平均やナスダック総合指数が揃って大きく反発。また、アップル(AAPL)やアマゾン(AMZN)に続き、ウォルマート(WMT)、エヌビディア(NVDA)など主要企業の好決算が相次いだことも好感され、ナスダック総合指数は最高値だった2月の水準に近づいた。ダウ平均株価も終始堅調な推移となった。
- 22日の時点でS&P500株価指数構成企業の主要500社のうち、95%の475社の四半期決算が発表され、米1-3月期決算がほぼ出揃った。ファクトセットのまとめによると、主要500社1-3月期全体の純利益が前年同期比14.6%減益となり、リーマンショック直後の2009年7-9月期の同15.7%減益に次ぐ低調な水準となった。また、主要企業267社のうち172社、3社に1社以上が2020年通期の業績見通しを取り下げている。コロナ禍を取り巻く不確実性に企業収益の見通しが大きく翻弄された格好だ。
- そうしたなか、米主要企業の業績の二極化が一段と鮮明になった。FAANGに代表されるフェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)などIT大手の業績が軒並み市場予想を上回り、株価も連日最高値を更新。電子商取引に注力した小売り最大手のウォルマートやディスカウントストア大手のターゲット(TGT)の業績も底堅さを示した。一方で、百貨店大手のJCペニー(JCP)、レンタカー大手のハーツ・グループ(HTZ)など経営破綻が相次いだ。IT大手善戦の後押しを受け、ナスダックは昨年末より4%高い水準だが、ダウ平均は昨年末より14%低くなっており、主要指数にも格差が表れている。また、前述の通り1-3月期の米主要企業は14.6%減益だが、海外売上比率が50%を下回る企業が同20.9%減益となった一方、海外売上比率が50%を上回る企業は同2.8%減益にとどまった。
- コロナ禍が図らずも米ネット社会の進化を後押しする起爆剤となった。足元では、中国の全人代で議題として取り上げられた香港での国家安全法導入を巡り、米中対立の先鋭化、米失業率が高止まりの公算であること、実体経済の悪化など不安材料も立ちはだかっているが、米中英の大手製薬メーカーによる新型コロナウイルスのワクチン開発に目途が付きつつあることが今後も株式市場を下支えるものと期待されよう。ネット社会を追い風に、米IT企業による相場牽引がより一層顕著となろう。アマゾン、フェイスブック、エヌビディアなど主要IT大手に引き続き注目していきたい。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/22現在)
■主な企業決算の予定
●5月26日(火): キーサイト・テクノロジーズ、オートゾーン
●5月27日(水): HP、オートデスク、ラルフローレン
●5月28日(木):アルタ・ビューティ、セールスフォース・ドットコム、ノードストローム、コストコホールセール、DXCテクノロジー、PVH、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー
■主要イベントの予定
●5月26日(火)
・米ミネアポリス連銀総裁がバーチャル討論会に参加
・米主要20都市住宅価格指数 (3月)、FHFA住宅価格指 数 (3月)、新築住宅販売件数 (4月)、消費者信頼感指数 (5月)
●5月27日(水)
・米ミネアポリス連銀総裁がバーチャル討論会に参加
・米主要20都市住宅価格指数 (3月)、FHFA住宅価格指 数 (3月)、新築住宅販売件数 (4月)、消費者信頼感指数 (5月)
●5月28日(木)
・米 ニューヨーク連銀総裁がバーチャル討論会に参加
・米GDP (1Q)、新規失業保険申請件数 (23日終了週)、耐久財受 注 (4月)、中古住宅販売成約指数 (4月)
●5月29日(金)
・米個人所得・支出 (4月)、卸売 在庫 (4月)、ミシガン大学消費者マインド指数 (5月)
●6月1日(月)
・米ISM製造業景況指数(5月)、建設支出(4月)、マークイット米国製造業PMI(5月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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